『PAREIDOLIAS』できました!
①CDは11/1より発売開始しています。西永福JAMの会場では即売します、新代田LFR、名古屋stiffslack、大阪FLAKE RECORDSでは11/2から取扱開始する予定です。因縁の歌詞カード付き、紙ジャケでカサカサしてて良い質感、フィジカル感しっかりとあります。税込2000円。
②Bandcampでのリリースは11/5の16:00から、Bandcamp FRIDAYに合わせた発売となります。24bit/96kHzの超ハイレゾで聞くならこちら!
③Spotify、Apple Music、Amazon Musicなど各種サブスクリプションは11/12配信開始します。
④CD通販もやります。送料込みで2300円。ご希望の方はinfo@loolowningen.com宛にご連絡くださいませ。
ラフミックスから数えると300回くらい聞いていてもはや麻痺してるけど、過去一番手応えを感じている作品です。今回は楽曲ごとに思い出などを書いていきます。最初は見ないで聞いてほしいけど…!
1.DOPPELGÄNGER
いつしかライブの定番になりました、そこそこ派手で歌詞も聞こえてくるライブ映えする曲。思春期の私の感性にいちばん響いたバンドの1つがポートランドの31knotsなのですが、そこへのオマージュたっぷりなアウトロ。うだつのあがらないコーラス。ライブアレンジをする作業の際にはダイナミクスの部分で福島のRedd Templeの発想を借りたような記憶があります。
後半までクリックを鳴らして、アウトロのタイム感は10年くらい一緒にやっていたことによる阿吽の呼吸ということにして強引に録音しました。レコーディングをしたStudio Zotがブースがないためギターを同録する事が出来なくて(一発録りのスナッピ共振が嫌いなタイプ)、でも波形を見ながら演奏するのは悔しいからムキになって直感で弾きました。それ含めた揺れがいいのではないでしょうか。
この曲は歌詞が気に入ってます。伝言ゲームみたいに歌詞がだんだんバグっていく/滲んでいく感じを出せて、タイトルとの親和性がある…気がしてます。私にとって良い歌詞を書けたかどうかは、旋律に対しての歌いやすさと複数の意味を持たせられたかどうかっていう2点がすごく大事で、偶発的にでも結果的に必然性があると満足します。
Zotでの録音に慣れてきて、インディペンデントなんだしとにかく攻めの姿勢のミックスを!と意気込んで節々にエフェクトかけてますが、ラージスピーカーででかい音で聞くとテンションが上がる仕掛けも、一晩寝かせてイヤフォンとかで聞くと赤面したりしますよね。そうした葛藤の形跡が節々に見られます。語彙がなさすぎて町内会のお知らせの音、とリクエストした冒頭のローファイボーカルが良いですよね。
2.コンコルド
これもライブの定番曲。エイトビートをいかに新鮮に鳴らすかというテーマで作った気がするし記憶な捏造の気もします。バンドでアンサンブルを組む時に、所謂ギターと所謂ベース、って発想で作るとトリオの場合陳腐になりがちですが、モダンジャズの2管の発想で作るとクリシェになりづらいし2管の発想で作ってるってドヤ顔ができておすすめです。ウロボロスのように追いかけっこをする相似形のフレーズと人力ディレイ、そしてそれにひっくり返ったり戻ったりするエイトビートっていう良く聞くと構造が愉快な曲です。爆音に頼らずにカタルシスがある、そういうのいいですよね。
この曲はレコーディングをどうするか最後まで迷いました(いまもこれが正解だったかはわかってません)。ビートルズのBACK IN THE USSRみたいにジェット音SEを入れたい欲求に駆られたり、ギターをもっと足して分厚くしないと他の曲に比べて貧相に見えないかとか、ルロウズの所謂「せっかくなら理論」に引っ張られそうになってました。特にこの時並行して歌まわりに20トラックくらい使った「黄金の土」を作ってたので、いっそう悩んでました。未だにもっと足したいなあエフェクトかけたいなあって場所はありますが、ジェット音は入れなかった当時の自分を褒めたいと思います。
3.御盾
力強いフレーズが牽引するロックチューン。序盤のドラムはレッドツェッペリンのBlack Dogをいちばんハイになってる時のキースムーンのテンションでやる、みたいなルールで若気の至り感を演出しています。2回目のヴァースでリズムがスパートするくだりのところは録音したものを聞いたときにいまいち前ノリ感に乏しいなあ、ポケットに入ってない感じがあるなあと思い協議の結果ドラムパートだけ全体にかなり前に音をずらしました。プロツールス恐るべし。ポイントで編集する人ってたくさんいると思いますがパート全体に1くだりまるごと結構怖いくらい動かすのってあまりなくないですか。
ベースの音に不良感が足りなかったためサンズアンプで死ぬほどエッジィな音にしました。イメージはいちばんイライラしている時の中尾憲太郎さん、を参考音源とか聞かずに脳内でデフォルメ化したもの。
途中でギターのフィードバック音が鳴るんですがオナラみたいに中途半端な音になってしまい、その後のドラムの部分ばかり気にしていたのでチェック漏れのまま完成してしまったのですが恥ずかしいです。私はそもそも普段そこまで歪ませないのでフィードバックとかうまくコントロール出来る人に憧れます。
エンジニアの久恒氏がずっとこの曲のことを見立真一、見立真一、って言うので知らなかった私は調べました。
4.他人の夢
頭3曲は3人だけで演奏していて、ここからゲストプレイヤーが加わっていきます。所謂A面最後の曲。この曲は作曲自体はちょっと古いのですがアレンジがずっと定まらず、ロバートグラスパーエクスペリメントのこの曲で鳴っているクリスデイブ?の高速アフロビートの引用みたいなアプローチで漸く光が見えた感じでした。私はこのアルバムの中でドラムがいちばん輝いてる曲と思います。フィルから何から。ギターとベースとKevin McHughのエレピが追いかけっこをしているようなアレンジで、音を積みすぎずに楽曲のムードを作ろうと頑張りました。あとこの曲でやりたかったのはベッカスティーブンスのこれ、みたいに複数台のブランコのようにフレーズが絡んだり解けたりするアレンジを試しました。
ルロウズ録音ではお馴染みの? meytélのコーラスも楽曲のミステリアスさ、霧のかかったような雰囲気を深いものにしてくれています。アウトロのCM7が一生鳴っているところは彼女とケビン2人に空間だけ渡して作ってもらったようなもので、ケビンのメランコリックなピアノが面目躍如!という感じです。
この曲はマスタリング時にノイズが乗ってて、私たちとしては当初過剰にアナログな処理したからかなあと思ってたのですが、何度指摘しても直してもらえなくて、結局マスタリングサンプル用にダウンレーティングした過程で云々…という説もありますが、まあ謎です。もちろん最終的に修正されています。
5.種を蒔く
この曲のインスピレーションはとにかくサクラメントのMeet Cute。この曲を聞くと2018年US西海岸ツアー、ギター失くしたりライブ会場潰れたりアンプ壊れたりと波乱のあった翌日に彼らとハウスショーで共演して、終演後爆音のDJで踊ったり、焚き火したり、Calorina'sっていうB級メキシカンのファストフード店で子犬くらいのブリトーを奢ってもらったりした記憶が一瞬で甦ります。曲の原型自体は割と前からあった気もしますがボーカルのキーが低いのでたぶんライブでやっても映えない盛り上がらないと勝手に思ってて演奏したことはないはず。
キックの音をとにかく印象的にしたくて、レッチリみたいな、メロコアみたいな皮のみのデチ!って音にしたいですってオーダーした記憶があります。ミックス中は派手すぎて苦笑する感じの場所がありましたがアナログ味マシマシなマスタリングを施したことによって程よいバランス感になったような。モダンすぎないようにケビンのメロトロン、? meytélの時間感覚を無化するコーラスが光ります。またこの曲で私はトレモロというエフェクトは全種類の音楽に効くというこの世の真実に気づきました。
そのつもりはなかったのですがサビがちょっとだけオアシスのこれに似てますよね。。アウトロのギターのリフレインはこれもそのつもりはなかったのですがスーパーノアのこれに似てますね。それぞれのファンの皆さんすいません。
6.君はスター
DOVESというバンドのこれのように、徹底的に狙ってアンセム調のものを作ったらどうなるだろうかというのがそもそものインスピレーションです。当然根暗な私が家や脳内でしこしこ作るので、クラスの1軍のような360°ハッピー!みたいなフィーリングのものは作れませんが、歌詞含めて別人格の、なんというか叶うことのない憧れ、みたいな感覚を楽曲に落とし込みました。歌詞は言葉遊び感が強いものの内容として破綻はしてないつもりです。
MITOHOSというコンピでmiu mauに楽曲提供のオファーをした際からずっと、ボーカルのMasami Takashimaさんと何かを一緒にしたいなあと思っていました。すべてに丁寧で真摯で、もちろん魅力的な、凛とした声の持ち主。そして私にとっては元レーベルメイト、10年以上の関係性なのですが数度の共演など経てもなおずっとミステリアス。きっと一生ミステリアス。声をかけるにあたって彼女の過去の音も色々とあたったのですが、私たちにとっても、彼女にとっても、ここまで直球のポップソングはなかったのではないでしょうか?自分の作った歌詞を人にメインで歌ってもらうと、見落としていた意味性や響きなどが聞こえてきて、とても作業をしていて楽しかったです。
スーパーカーのLUCKYみたいにツインボーカルになっていますが、私の声がいる、いらないの線引きに悩みました。世代的にスーパーカーに完全にやられていたクチだったので、ギターソロの構造はLUCKYを自分なりにオマージュしています。あと背景化されてますが私のギターとケビンの鍵盤の付点四分音符がずっとついてくるフレーズが楽曲のボトムにコクを与えています。あとアウトロのカリンバは最初録音した時にはわざとらしいかなってちょっと心配だったのですが、ミックス、マスタリングを経て物語感を出していて結果良いですよね。
7.黄金の土
この曲も結構前から原曲は存在していました。西田修大が参加した2ギター編成のルロウズで1回演奏した記憶がありますが、そこから楽曲自体は個人的に思い入れがあったので色々リアレンジ。本当は2ndアルバムに超シュールなアレンジで収録する予定だったのですがうまくいかなくて、そのあともう〜〜〜〜〜〜んってなりながら漸くレゲエのリディムを取り入れてハマった感じになりました。
シカゴの90 day menのような90~00年代的なサイケデリックの感覚、それから煙たいけど古さ/新しさとかは特段感じないような音にしたいと思って、ギターの音にはとくに拘りました。いつも自分のギターの音に満足出来ないのですがこの曲のワウ半止めのリードとか、節々のギターの音はイメージをきちんと形に出来ていて満足しています。歌とギターはあきれるほど重ねました。
歌詞も演奏も本当はもっともっと長かったのですが削ぎ落として、それでも7分超え。想像なんてとうにビヨンド、問題ないさ泥舟にいよう、というコーダ部のリフレインは旋律と歌詞が手に手を取り合って魅力が増大してると自負してます。ここだけ100回くらい繰り返してみんなで歌いたい。
今回のアルバム、もちろん全曲全力を尽くしたし感慨もそれぞれありますが、個人的にはいちばんうまく録れたのがドッペルゲンガー、いちばん思い入れがあるのが黄金の土という感じです。
久恒氏は私の言語化しきれていないリクエストをうまく理解してくれて、果てしない実験に半ば苦笑しながらも付き合ってくれました。Timothy Stollenwerkは過剰な感じ!アナログなバイブス!っていう私のリクエストに真正面から向き合ってくれました。やりとりすごく面白かったのでいまマスタリング先に悩んでるバンドにもすごくおすすめですよ。Pajan Satoriは常にバックアップしてくれる最高の友達、DEAF TOUCHはミュージシャンファーストの最高のレーベルです。皆さんに届きますように。