10.29リリース予定、ルロウズ3rdアルバム『PAREIDOLIAS』各種発注もひと段落し、納期の数字的には間に合う感じになりほっとしてます。予価2,000円、通販も承りますのでご希望の方はinfo@loolowningen.com宛にご連絡ください。
プロモーションも兼ねて暫く色々書きます。まずはレコーディング、ミックス、マスタリングについて。
先行配信で「コンコルド (Concorde)」と「種を蒔く (Seeding)」がBandcampでフル試聴頂けるようになりました。
今回のアルバムはここ最近のライブの定番にしていた「DOPPELGÄNGER」「コンコルド」、そしてデモでは同時期〜少し前から存在していた5曲をコンパイルしたもので、本当はさらにもう1曲「ポラリス (Polaris)」という曲も収録する予定だったのですが、録音環境的に、また今回はLP/Cassette化を考えていたので収録時間的に断念しました。おかげでトータル39分という狙ったような尺にまとまりました。
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暫くライブ活動が自由に出来ないなあ、と気づいた2020年の秋冬くらいから準備を始めて、ベーシック録音を始めたのは今年の1月。その後自分のPCが壊れて半分データを失くしたりwin→macにしたことでDAW環境も一気に投資して全とっかえしたりして操作にオロオロしたりしながらオーバーダブ要素を加えて7月末に2mixまで仕上がった感じです。録音から時間かけちゃうと粗がどんどん気になって鮮度を失った気持ちになってしまいますが、このアルバムも危うくそうなるところでした。
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録音、ミックスは前アルバム、それからMITOHOSコンピの「ヘブン(Heaven)」に続きStudio Zot久恒亮。「ヘブン」の出来が凄く満足のいくものになって、それで今回も一緒にやることにしました。私たちのやりたいことを理解してくれている、ということ、それから久恒氏はギタリストなのでギターの録音についてうまく言語化出来ない部分まで伝えられること、さらに歳が近いから?遠慮なく互いの仕事にダメ出しをしあえるのが話が早くてとても良いです。
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ドラムはラディック、ベースはリアンプをせずフレットレスとフレッテッド、ギターは壊れたストラトと偽物のテレキャス。ギターアンプはフェンダーのベースマン59。スティーブアルビニ意識のアンビエントマイクを違う距離に2本立てして音の壁を作れるようにしたということですがどうでしょうか、そもそもコードをがっつり弾いてる曲があまりありませんが「御盾(My Shield)」とかで感じられるかもしれません。ディレイやリバーブについては先に録音してしまうと空間を決めすぎてしまうため私はいつもビールくらいスーパードライで録りますが、今回改めてトレモロとワウの偉大さに想いを馳せることとなりました。
死んだ後にトレブルを削った音で柔らかく鳴らすトレモロのかかったギターが聞こえてきたらそこは天国だなって思えませんか。あと私はワウが下手くそですが、半どめで鳴らす歪みギターの音って凄くカラフルに聞こえませんか。
9月より山本氏がホームスタジオ(!)を構築したので今後はもうベーシック録音をZotでお願いしなくなるかもしれない。今回のアルバムとは別に早速ルロウズで1曲録音をしてみましたが、システムさえもう一息整えばいよいよここで良いなあという感じになりそうです。〆切ないのはクリエイティビティやテイクのクオリティにはプラスですが緊張感とかっていう意味ではマイナスなんでしょうか。やってみないとわからないですね。
ボーカルはスタジオに導入されたWARM AUDIOのM251ふうのやつ。マツタケのように木箱に入ってるのを久恒氏が自慢げに見せてきたのが印象的でした。持論ですが「木箱に入ったらなんでも一人前」というのがありまして、私はギターのハードケースは可搬性を鑑みずツイード派です。汚れるけど。
半分くらいのボーカル、? Meytélのコーラスは私の家で録音。Kevin McHughの鍵盤はケビンの家で録音(とにかく物がないでお馴染みのケビン家ですが今の家はバスルームに洗剤1コしかなくてマジで夢を見てるのかと思った)。高島さんのボーカルは徳島から産地直送音を送って頂きました。高島さんは多重コーラスも提案してくれて、キーも強引にこちらに合わせてくれて、もう西に足を向けて寝れません。。
最高なサポートミュージシャン陣についてなど、この辺は曲紹介の折などに詳しくまた書きます。
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今回はミックスにだいぶ時間をかけました。トータルイメージをもとにサポートメンバーにもらった音たちはラフミックスの段階ではドライすぎてまだ抽象的で、また私の中でイメージを詰め切れてない部分も多く、手探りだったのですが、仕上がっていくにつれてどんどん興奮出来たし、間違ってなかったと思えてホッとしました。
1stアルバムでは制限を設けず足し算をしまくり、2ndアルバムではディシプリンまくりで制限しまくり、今回は「足すけどモデラートに」というのがうまく出来たのが今回のプロジェクトで一番の達成感でした。一回足し算始めると他の曲が薄く聞こえちゃってつい不要な足し算の強迫観念に駆られるのですが、今回はそれも含め、まあエンジニアが差分はなんとかしてくれるでしょうという信頼感、あるいは良い鈍感力があったのかもしれません。
相変わらずプラグインの使用基準については「UIの見た目がかっこいい」「UIの見た目に興奮出来る」「名前にロマンを感じられる」に則った厳密なドグマに拠るもの。各社がんばって私たちの地獄のように偏狭なニーズを超えてくるデザインのプラグインの開発に勤しんでください!
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マスタリングについては当初全くどこに頼むというイメージがなく、色々な人に相談していたのですが、バタ臭い我々は久恒氏にそそのかされて段々と海外マスタリングの耳になっていって、最終的にFELL RUNNERのGregory Uhlmannに紹介してもらったポートランドのStereophonic Masteringにしました。
アウトプットしたかった音のリファレンスとしてはLandlady、Dirty Projectors、The Flaming Lips。ロックバンドのアルバムですがミステリアスで音楽的な柔らかい霧がかかっている感覚を志向しました。出せてるかしら。
HPに掲載されているエンジニアの「I don't mix records, I don't record records, I don't play in bands and I never had kids. Instead I've focused solely on mastering and have more than ten thousand hours under my belt as a mastering engineer. 」という熱い一文に苦笑しながらもなんとなくやられて、当初Skeletonsの人に頼むとかブルックリンのスタジオに頼むとかのオプションも考えてましたが、結果逐一やり取りが楽しく、アナログ感強め、そして攻めのマスタリングな音に仕上がり満足しています。次にポートランド行く時はスタジオにも行って挨拶出来ればいいなあと思ってます。