20210901

703(MITOHOS II インタビュー②Furate)

 

大好評!Bandcampのジャパンタグでトレンド入りも達成!ジャパニーズオルタナティブのコンピ決定版"MITOHOS II"は皆さんもうチェック頂けましたでしょうか。

ちょっと時間空いてしまいましたが参加アーティストのインタビュー第二弾いきます。ルロウズの情報をフォローしてくれてる方には山口が熱い、というのは既にお馴染みかもしれませんが、shiNmmに続いてとっておきのバンド、Furateのギターボーカルかねこゆうき(@kogumayuki)氏にインタビューさせて頂きました。


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__私はshiNmmとの出会いを通じてfurateを知りました。ベテランのようなサウンドの脱力感や引き算を怖がらないアレンジ、そして皆さんの年齢的にはきっとリアルタイムでないはずの通底和音として流れる90'sのテイストなど、どこを切っても2021年に最前線で活動する20代前半のバンドとして良い意味で違和感を感じます。皆さんのバックボーンや結成〜現在までの経緯などを伺えませんか。


かねこゆうき:僕たちの結成は単純で、大学の同じ軽音楽部にたまたまいた三人を誘いました。最初の頃はFurateという名前ではなくて、現リードギターの秋山くんをボーカルギターにして僕がリードをしようと思っていました。というのも、メンバーの三人はどちらかというと、andymoriやaikoやマスロックなど邦楽を聴いていたし、秋山くんもボーカルとしてナードな良い雰囲気を持っていたので、そこを中心に活かしたケバブジョンソンみたいな音楽をしたいなと思ってました。 

しかし、やっていけどもパッとしなくて、なんか違うなーと思ってました。まず僕が人の歌うメロディを考えられないし、日本語のリズムで歌にするのが難しいし、詞を書けないし、なによりリードギターを弾けませんでした(笑)僕自身がこれから先の姿を想像できない状態だったので、みんなも良くわからんみたいな感じでした。


__最初からこういうスタイルを志向していたわけではないんですね。


かねこ:それでもしばらくやっていたんですが、ある時当時のバンド名がダサすぎるってことで、名前を変えることになり、それを機に思い切って僕が歌って好きなように作る感じにしようと思いました。僕はUSの90年代が好きだったので、そこにある色々な雰囲気をベースに好きにやってみようと思いました。そこから今のFurateという名前になりました。

それから現在までのFurateは、思い返してみると、僕が三人に好きなことやアイディアを押し付けて、三人は意味がわかりませんっていう顔をしながら何故か良いと思ってやってくれていることで成り立っています。


__脱力した感覚、ギターのアンサンブルと歌が並列にある感じ、いまのFurateサウンドのこの辺のフィーリングはかねこ君発信なんでしょうか。


かねこ:形として90’sの雰囲気があるのは、単純に僕が好きだからそうなっていると思います。他のメンバーはどちらかというと90’s USの音楽に馴染みがあるわけではないですが、僕から見た90’sのイケてなくて、ナルシストで、ナードだけど工夫して自分たちの好きなことをやっていきたいという雰囲気は、みんな共通する部分があるのかなと思っています。僕自身も、音楽ってもっとすごい人がやるものだと勝手に思っていたんですが、90’sの音楽や時代の雰囲気を知ってからこんな感じでも好きにやっていいんだと思えたのが好きな所です。

正直音楽的なことに関して、僕は普通より全くわかっていない方だと思います。なので逆に音楽的な?足し算が苦手で、引き算しているように見えるのは単純にできる事しかやっていないのが理由なのと、間近で同じ山口のshiNmmを見ているので多分一般的な音楽の感覚がバグっているせいだと思います(笑)。そのおかげで自由にやれている感覚があります。

単純に好きなことをやっていく先に90’s の音楽のような形があったということと、一般的な音楽の形にとらわれず、良いと思える何かを自由に追える環境がいまのFurateをつくっているのかなと思います。


__7月にFurateは2ndEP『Those In My Tin Case』をFRIENDSHIP.よりリリースしています。録音時期は今回のコンピの曲と近いのですか。


かねこ:実は、2ndEP『Those In My Tin Case』の録音自体は一年前くらいに終えていて、僕が出し渋っていたせいでリリースが遅れました。 一番最初に出したミニアルバムのrec&mix 、ディレクションまでをshiNmmの学さんにお願いしたので、今回は後輩でエンジニアの仕事を始めた藤井心くんにお願いして、自分たちでディレクションしながら作っていきました。


__そうなんですね。EPで
はライブの定番曲を軸に、ライブ感を真空パックしたロウでドライで素朴な鳴り、そして本丸氏の重いドラムが好印象でした。


かねこ:当初の目標は、Furateらしいルーズさを意図的に残した、良い意味でちゃんとしていない音源をつくりたいなと思っていました。しかし、やっていく中で僕たちらしさとはそもそも何なのか?と考えだしたり、ただのミスともとれる演奏の揺らぎやミスタッチをどこまで「あり」として残すのかに悩みました。

そもそも、録音している期間がまあまあ長かったので、その間にも曲はアレンジされていって違う様相になっていましたし、録音の中盤辺りでは、ギター歪ませすぎるのダサいなとか、音でかいのうるさいなとか、自分たちに必要な音数だけでやってみたいな、とか考え方もどんどん変わっていきました。なので、6曲それぞれに違う時間と場所と考え方が反映されているので、アルバムとしてまとめるのに苦労しました。 


__〆切を設定した短期集中みたいなスタイルではなく、気の向くままに、そしてその時の感覚に素直にレコーディングを進めた感じなんですね。どういうディレクションをしたのですか。


かねこ:一番最初に録った曲は「My Name Is Your Name」で、録音機材もまだ整っていなくてアナログ感が一番強い曲になりました。それ以外の曲は録音機材が新しくなって、少しづつ録音できる幅や音が良くなっていきました。ですが面白いことに、一番音が悪くて録音できる幅も少なかったこの曲が、全体を通してみたときに一番Furateらしい曲になったのかなと思いました。

それと「The Frog Song」は、Daniel Johnstonの「Love Forever」にしたくて、音や雰囲気をかなり意識しました。録音する上で音と雰囲気にこだわりがあったり、めっちゃ低い声をかぶせてみたり遊びも多かったので、そういう意味ではこの曲もFurateらしい力の抜けた遊び感が出せたのかなと思います。

録音の過程で曲に対する方向性が変わったのが、一番目の「Robin Hood」と最後の曲の「Roll In and Dive (Slow Walking)」です。先ほど言った、ギター歪ませすぎるのダサいなとか、音でかいのうるさいなとか、自分たちに必要な音数だけでやってみたいな、というのがバンドの方向性になってきて、より演奏の息遣いやフィジカルみたいな部分を出せないかなと思って録音しました。

「Roll In and Dive (Slow Walking)」は、前回のミニアルバムに収録されている同じ曲をアレンジして、過剰に歪ませず音も少なく小さくして、できるだけマイナスした上で残ったものを大切にしたいという思いでやりました。


__その話を伺った上で曲を聴いてみるとアルバムの印象が変わります。実験などを経て、より自分たちのアイデンティティに向き合うようになったんですね。


余談ですが、この曲を録音しているとき面白かったのが、ライブではしないコーラスをドラムの本丸ちゃんにお願いした時のことです。僕は歌詞とか全然伝えてなくて、なんとなくのメロディしか教えてなかったので、大丈夫かなと思っていたんですが、意外にも本人は自信満々に絶妙に間違っている歌詞を歌っていて、その度胸すごいなと思いワンテイクくらいでOKをだしました。なんとなく、この本丸ちゃんの素直な度胸にFurateの曲やノリは助けられているんだろうなと思いました。 


__外野ながらすごくわかる気がします。本丸ちゃんは他のメンバーのひねくれた感覚をポップにアウトプットする、そういうバランス感覚を持ってると思いますし、Furateのもつバンドらしさを象徴していると感じます。


かねこ:そんな感じで今回のアルバムは、ライブでやっていることをどう録音という形で表現するのかという問題を抱えながら、試行錯誤している過程がそのまま形になったなと思いました。それもエンジニアの心くんが、僕のよくわからない何か良いという感覚や言葉に悩まされながらも音源らしい形にしてくれたおかげだと思います。作品として、音源をつくる難しさがとても分かりました。


__”MITOHOS II”の参加曲「Never Let It Go」はshiNmmの学くん(やまざきまなぶ(gt))がエンジニアと聞きました。EPでの経験値を踏まえて、今回はどこにフォーカスしたのですか。


かねこ:コンピレーションの参加が決まって、エンジニアはもう一度学さんにやってもらおうと思いました。とにかくこの曲のキュートさを出すことに全力を注ぎました。録音にはメトロノームを使わず、曲のノリや雰囲気、この曲のキュートさはどこなのかを一からみんなで詰めました。

学さんとのレコーディングは、前回もそうでしたが、今まで演奏していて気づかなかったところを発見したり、そこから曲の解釈が広がっていったり、自分たち自身について新しく知っていったりする不思議な作業になります。もちろん、音源ができあがるという点は変わらないのですが、それまでの過程がとても自分達にとって大事で、録り終えた後にも色んな意味で繋がっていくレコーディングになりました。


__新たな発見という事ですが、具体的にはどういう部分ですか。


かねこ:実際、本丸ちゃんはどうしても謎の加速をするんだなとか、ベースの音の降っていく部分から立ち上がりをばねのようにつなげると気持ちよく転がっていく感じになるなとか、録音しながら気づいたりする過程がとても楽しくてワクワクしました。そうした中で出来上がった結果として曲があるのですが、全部録り終えた後に「めっちゃ可愛い!」ってみんなでテンション上がった時録ってよかったなと思いました。世に出すので、もちろんどう思われるんだろうか気になりますが、なにより自分たちが好きだと思える音源ができたことが嬉しかったですし、それで終わりではなくてこれからやっていく中でこうしようという話に発展したのが良かったです。 

依然、自分のこだわりに近づけるための音作りやアイデアに関しては苦手のままで、学さんとのやりとりを通して大部分まかせきりでしたが、次回はそこも含めてやっていけたら良いなと思いましたし、自分たちはまだまだ音を使ってやれることが沢山で、自由に遊べるんだなと思いました。


__音楽を街単位で区切るのは無粋とわかっていながらも、”MITOHOS”はそこにあるかもしれない物語やムードを汲み取りたいですし、やはり、どうしても山口のシーンは調べれば調べるほど面白いです。より天真爛漫に自分たちの作りたい音に向き合ってる感じ、そして近いバンドたちと共鳴、あるいは切磋琢磨して影響しあっている感じ。現在の皆さんの周りの動きについてどうご覧になってますか。


かねこ:僕がそもそも音楽を本気でやりたいと思ったきっかけは、大学時代にshiNmmのライブをみたことが大きくて、全然普段聴くような音楽じゃないのに何故か胸に響いたことが始まりでした。大学という場もそうですが、湯田のOrgan’s Melodyはジャンルとか、もっと言えば音楽とか関係なく好きなことをやっている人がいて、互いに面白かった話をしたり興味のあることを話したり、それぞれの音楽の先にみているものにグッときたり、影響しあっているように思います。 先輩のelephantやshiNmmも、後輩でいえばAyatoも、Furateとは全然ジャンルが違うけど、ジャンルでくくるのが野暮だなと思いますし、別のところで大きく共鳴しているのかなと思います。

ですが、実際世の中がこういう状況で、そういった集まれる場が少なくなっている実感はあります。本当は、僕がshiNmmと出会ったように、下の世代へとつながっていけたらなという気持ちはずっとありますが、今までとは違う形を模索しながらやっていかないといけないなと思っています。それは多分、僕の周りの人たちも同じで何が正解か分からない中で模索しているんだろうなと思うので、いつか芽がでて面白い形で現れたらいいなと思っています。それは、コロナになる前からもそうですが。


__pavementは4枚目、5枚目のアルバムで録音芸術を突き詰めるような作風になり解散しました。Beckはいまやニューウェーブスターのようなサウンドに変貌しています。furateの今後の作品のビジョンは今のギターオリエンテッドなアプローチをより突き詰める感じなのでしょうか、それとも新しいサウンドを志向しているんでしょうか。


かねこ:多分、今までもこれからもそうだと思いますが、その時一番好きなことを僕たちがやるならどうやるだろう、と面白がって考えながらやっていくと思うので、音楽的にこうしていきたいというのは僕にも分からないです。

ですが、先述したように僕はまだまだ音楽のことを知らなすぎるし、ずっと曲らしい曲を作りたいって気持ちがあるので、どんな形をしているか分かりませんが、僕たちの息遣いみたいなものを音で前回よりも表現できるようになっていけたら良いなと思います。

その過程で、もしかすると目指すところは、音楽を使って一つのまとまった作品として一貫した何かを表現したいって思えるようになることなのかなと思います。言って、まだ音楽をやりだしてようやく始まったくらいの所に居るんだろうなと思います。


__自身にとってのオールタイムベスト5を教えてください。


かねこ:やはりなという感じでしょうが、、、 
1、 Pavement / Easily Fooled
2、 Beck / Teenage Wastebasket
3、 The Velvet Underground & Nico / I’m Waiting for the Man
4、 Beat Happening / Indian Summer
5、 Daniel Johnston / The Spook



Furate
2018年から山口県山口市を拠点に、東京、大阪、京都、福岡、熊本、などで活動する四人組。 90年代USのDIY精神に影響を受けながらも、現代に生きる自分たちがやる意味をひたすら模索している。 主に影響を受けたアーティストは、Pavement、Beck、Beat Happening、Lou Reedなど。