『MITOHOS』インタビューもう少しだけやります!今回は京都のオリエンタル・プログレッシブジャズ、キツネの嫁入りよりリーダーのマドナシ氏に話を伺いました。”スキマ産業””スキマアワー”という主催イベント/フェスを通して、自分たちや自分たちの信じる音たちの界隈を盛り上げようとする姿勢には強く共鳴しますし、あとはエグいけどカラっとしてるマドナシ氏の言う悪口が個人的に大好物です。
キツネの嫁入りは最近またメンバーチェンジがありましたが、DEEP PURPLEみたいにパーソネルマップ作れるくらい初期から色々と変遷がありますよね。元々のバンドの成り立ちと現在のスタイル/メンバーになっていった経緯を教えて頂けませんか。
マドナシ(以下M):最終的にはオリジナルメンバーがいなくなるナパームデスあたりを目指そうと思ってます。ざっくりピアノ/アコーディオンのヒサヨとアコースティックギターの私マドナシ二人で歌があるアコースティックな音楽をシンプルにやろうと始めたつもりが、「やっぱもっとロックな」「やっぱもっと変拍子が」という欲求にそって人が増えて行きました。
2020年時点で、私の中で、改めて理想とする音楽、活動スパンを見直しました。それを再現するために、メンバー各々に考えを問い、相談した結果、現編成(歌・アコギ・ピアノ・サックス・コントラバス・ドラム)になりました。
緊張感、変拍子、音数/言葉数の多い点描のようなアンサンブルと並行して特にシニカルなリリックが印象的です。アレンジメントはワンフレーズ/歌詞の一節を持ち込んでバンドで膨らませる手法って聞いた事があるのですが、言いたいリリックが先にあるのでしょうか、それともフレーズのモチーフなどが先なのでしょうか。またサウンドにおけるインスピレーションや楽曲内で大事にされていることは何ですか。
M:曲によりけりですが、最近はフレーズからのが多いっすね。リリックは思いついた時にメモってるのが膨大にあって、それを当て込んだりもします。インスピレーションや楽曲のポイントとしては、色々経緯ありましたが、現時点では「私が納得いっている」が一番重要で、そん次に「メンバーが楽しんでできる」になります。第一には、自分らのために作ってるもので。
今回提供頂いた「狂想 2020」は2017リリースの『ある日気がつく、同じ顔の奴ら』収録のリード曲の現メンバーでの再録です。前作のテイクも良いものだと思ったのですが、今回再度この曲を取り上げようと思ったきっかけって何なのでしょうか。
M:新曲のアレンジが間に合いませんでして(w ってのと、編成は変わってきましたが、常に私は、「今」が一番ベストだと思っているので、「今」の編成で過去の曲全部録り直したいと編成が変わる度に思っています。現実問題不可能ですが。
あと、この曲は特に、頭の中で鳴っている音を旧アレンジでは再現できなかったので、現編成で完成した印象が強かったため録音してみたかったという理由もあります。
キツネの嫁入りは『スキマ産業』『スキマアワー』というイベントを京都で継続的に主催していて、有名無名を問わずに強度の高いミュージシャンを招聘しています。そこには自分たちのブランディングもあるとは思いますが、私にはもっと俯瞰した、京都や自分の居場所/シーンへの意識的アプローチ、献身的なモチベーションを感じられます。マクロ的に括られる京都のシーンについてどう思いますか、そしてその中でどうあろうと思ってますか。
M:他の人がやってへんからやってるという至ってシンプルな発想と、あんまし面白いイベントもなかったので始めました。で、バンドを続けていくうちにお世話になった人たちも出てきて、そういう人達への恩返しの意味でも始めました。
しかし、その後、色んなイベントが開催されるようになり、面白いイベントも増えてきたので、企画頻度が減りました。立成小学校という特殊な場所が使えなくなったのも理由の一つですね。京都の音楽シーンというのは、あまり肌に合わない部分もあるので、居心地よくしようと思って始めた経緯もあります。
京都に音楽的な居場所がなかったという事でしょうか。
M:基本的には、過去の何かに対するリスペクトが顕著にわかりやすく出ている表現が良しとされる街だと感じています。その中で我々のスタンスは、基本的にはいろんな人に聞いてもらって好きになってもらえればええな、でも流行ってるの見たら、そのハードル超高いな。というあたりです。
現在新譜のレコーディングが始まっていると聞いてます。今作はどういった音を指向していますか、そして今後どういったものを作っていきたいと思ってますか。
M:私が歌いたい歌・作りたい音楽を作った音になります。そういえば全曲、セッションではなく私が作りました。あと珍しく打ち込みで作った曲が半分ぐらいあります。今後は現メンバーでセッションとかからも作りたいですね。現状シンプルに時間の都合上それができず一人で作ったという経緯があるため。
キツネの嫁入りの音にとって、あるいは自身にとってのオールタイムベスト5枚を教えてください。
M:
Lanterns/Son Lux
MEZANINE/MASSIVEATTACK
AENIMA/TOOL
Continuo/Avishai Cohen
Life Story/THA BLUE HERB
キツネの嫁入り(Kitsune No Yomeiri)
マドナシ、ひさよ、猿田健一、北村信二、伊藤拓史
2006年より活動開始。gyuune casetteより1st Album「いつも通りの世界の終わり」、2ndAlbum「俯瞰せよ、月曜日」、P-VINE RECORDSより3rdAlbum「死にたくない」、4thAlbum「ある日気がつく、同じ顔の奴ら」をリリース。歌・アコースティックギター・ピアノ・サックス・ドラム・コントラバスという編成ながら、プログレ・ジャズ・ロックを基調とし変拍子を取り入れた音塊。主催イベント「スキマ産業/スキマアワー」では、廃校・ライブハウスを舞台に、UA、ジム・オルーク、THA BLUE HERB、山本精一、大友良英、向井秀徳、トクマルシューゴ、高野寛、二階堂和美、キセル、石橋英子、タテタカコ、predawn、テニスコーツ、コトリンゴ、MUSIC FROM THE MARSといった多種多様なアーティストを招聘し続けている。まだまだ自分たちが楽しめる音楽への追求が止まらないため幾多のメンバーチェンジを経て現メンバーに至る。