12月にリリースしたコンピレーションアルバム『MITOHOS』は、ルロウズがこれまで全国で出会ってきた独自の音楽を紡ぐ人たち、そして得てしてアンダーレイテッドになっている人たちをひとつのかたまりとして全世界にアピールする目的ではじめたプロジェクトです。主観上等、ジャンル横断(だけど主観的なキュレーションだからロックバンド多め)、現在進行形、という3点を大事にしてセレクトしましたがその中でもグリンミルク、スッパさん、miu mauとともにいちばん古くから繋がりがある札幌の変態、喃語のリーダー武田氏にインタビューして頂きました。怠惰なのか真面目なのか、雑なのか丁寧なのか未だによくわからない、謎と冗談と愛に包まれたナイスガイの声をどうぞ。
武田(以下T):ちゃんと挨拶したいのでここにぶち込みます、まず初めに今回このような貴重な機会にお誘い頂きまして本当にありがとうございます。素晴らしいコンピに参加出来たことを誇りに思います。それでは満面の笑みで答えていきます
改めてプロフィールを振り返って吃驚したのですが、喃語はルロウズと同じキャリアなんですね(2010年結成)。元々のバンドの成り立ちや現在のスタイルになった経緯などを伺えませんか。
T:喃語を2010年くらいに始めたって事は何となくわかってはいたつもりですが、11年目になる、と考えると少し気が遠くなりますね。
記憶能力が完全に終わってしまっているので定かでは無いんですが、喃語は全員同じ大学の軽音楽部出身で僕がゆらゆら帝国のコピーバンドをやりたくて結成されました。僕は大学に入る前に「とびだせ!おともだち」というバンドをやっていたんですが、作曲にほぼ携わなってなかったので、次第に喃語でオリジナルの楽曲をやろうとするムーブメントが起こりました。2012年に前任者のベースがやめてしまったので、後任者の照井(照井茜:ba)が参加して今に至ります。
嘘ももらえませんか。
T:元々全員がルンバとしてこの世に生を受けてそれぞれスリッパなどを華麗に避けながら床を這いずり回っていたんですが、ある日仕事を終えて充電を始めると目の前が真っ白になるくらい明るくなって気がついたら人間の姿に変わっていて3人とも同じ場所に立っていたのが始まりです。
現在のスタイルって言って大丈夫なのか不安ですが、僕がギターボーカルというポジションを自分で選んだのにも関わらず歌が下手で歌いたくない、という異常者だったため、メロディが限りなく少ない、または喋っているような曲が増えていきました。
なんとなく分かりやすいジャンルでもつけておくかとポエタナティヴ・ロックを自称しています。誰も自称しない限りポエタナティヴ・ロック界最高峰のバンドになります、低い山ですが。
初めて共演した時のスーパープログレ/外連味たっぷりなムードに比べて、よりグルーヴの気持ち良さに重心を置いたミニマル、まあ実際のとこミニマルではないけど…なアレンジに変化してきている印象があります。サウンドにおけるインスピレーションってどこから来るのでしょうか。
T:ケレン味があるって初めて言われたかもしれません!
結成当初は、というか今も完全にそうなんですが、僕は音楽的な理論というか本当に何もかも分かってない完全アウトサイダーマンでして、りゅう(岩崎隆太郎:dr)とあかねは音楽的な知識がありますので、僕がとりあえずよく分からない原型を持ってきて、なんとかしてもらうスタイルで楽曲を作っています。それが年々変に落ち着いてきたのかもしれません(加齢によるものかもしれないと少し怖くなってきています)。
曲のコアになるリフは偶発的に出てきたものだったり突然思いついたみたいなのが多いです、そっからなんとなく形をつけてそこから受けた印象を元に歌詞を書いたり、保存されていた夢の内容や歌詞をつけて膨らませています。
楽曲内で大事にしている部分ってどういうところですか。
T:楽曲内で大事にしている事、難しいですね。
僕は自分が面白いと思える要素…例えば拍、構成、ギミックなどがあったらいいなと思っているかもしれません。とにかく自分が楽しければ誰かが楽しんでくれるだろうと信じているので。
あと「なんか変だけどいい感じにノれるような曲」になったらいいなあ、と思って作っているかもしれません。またそれと同時に「もうなんでもいいだろこっちは楽しいし全員頑張ってついてきてください」と思っているところもあります。
また、説明が難しいんですが、聞いてて「未来の自分が作った曲を強制的に引っ張ってこれたんじゃないか」ってなるときもあってそうなると嬉しいです。
「穴」はシーケンスのフレーズも混じるテクノのような前半~中盤から浮遊感のあるコーダ部に突っ込む、これまでとはまた違ったスタジオワーク/ポストプロダクション色の強い、プログレッシブなダンスミュージックでした。
ライブバンドとしての評価の高い喃語ですが、本曲の立ち位置としては今までと変わらずですか、それともライブでの再現とは距離を置いた表現なのでしょうか。
T:!?!?!?!??!!?!??!?!?!喃語ってライブバンドとして評価が高いんですか!?!?!?!??!?!?!?!?!?!!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!??!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
最後に共演した青山や南堀江のライブでのパフォーマンスもオーディエンスの反応も熱かったし、フィジカル凄く強いとおそらく私のみならずみんな思ってますよ…!
T:「穴」は作っているうちにどんどん膨らんでいって、喃語の今までの曲とは少し毛色が違うものになってしまいました。一応今までレコーディングした曲の中でライブで再現不可能なものは無い(はず)ですが、「穴」も同様です。
直近でYoutubeに公開されたスタジオライブでも演奏してますよね。
T:ギターでループを録ってから始まって、サンプラーを使って、またギターのループを録って演奏しています。僕はサンプラーを今まで使った事が殆ど無い赤ちゃんなので四苦八苦していますが、そのうちライブでも安定するように自分の成長を心から願っています。
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T:現状なんか他のインタビューと比べて、喃語のだけ軽いというかアホが転げ回っているみたいになってませんかね?曲調に比べて人間が軽くないですか?そんな事言われてもだと思うけど…
大丈夫です!
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3人とも札幌にお住まいですが、これまで~いまの札幌のシーンやそこからの自身へのフィードバックについてはどう感じていますか。
T:他の二人は分かりませんが、僕は「札幌のバンドシーン」みたいなものをよく分からないまま活動してきましたね。このインタビューで喃語の武田が本当に何もかもよく分かってないってのが伝わってほしいです。
年々同年代でバンドやってる人も減っちゃってますます孤立してるし、もうただただ自分たちで牙と爪を研いでいきたいです。
札幌のバンドらしさとかもよく分かってないし、好きなバンドはいるけど影響を受けたバンドは居ないと思います。札幌の土地から受けた影響は絶対あると思いますが、またそれもなかなか自覚するのが難しいです。他の土地に暮らしてみると浮き上がってくるような気がします。
確かに喃語には外から見る所謂「札幌」の偉大なインディペンデントの先達たちの匂いが無いです。サウンドとしてのフィードバックはないんですね。
T:あーーーー影響じゃないんですけど今まで札幌でバンド活動をしていて一番パワーと笑顔を貰ったのは「あばばずれ」です。現在は活動していませんが、僕にとっての札幌の宝であり光でした。
今後出したい音のイメージや活動のビジョンなど伺えますか。
T:個人的には自分がギターで出したい音のイメージがもっと明確になって、それに近づける事を願っています。今はそもそも自分が求めている音が見つからずただ暗闇に石を投げ続けている状態なので…。10年以上やってて何言ってるんだって感じですが。
バンドとしてはもっとねっちりしたり、ふっくらしたり、空っぽだったり無限に続いていたり揺れていたり、深く鳴っていたり、痺れたりするような、どこかおかしくて気持ちがいい音が出せたらいいなと思っています。
喃語の活動としては次のアルバムをレコーディングしたいですね。わけが分からないなりにどの曲をどうするかちゃんと考えて進めていきたいと思います。
今回の曲が新機軸の素晴らしいサウンドだっただけに次の作品への期待値が俄然上がってしまいます、楽しみにしてます。最後に、喃語の音にとって、あるいは自身にとってのオールタイムベスト5枚を教えてください。
T:喃語はメンバー全員音楽の嗜好がバキバキに違うので僕にとってのでいかせてください!難しいですが!
ゆらゆら帝国 / 3×3×3
humbert humbert / まっくらやみのにらめっこ
AU / Both Lights
BATTLES / Gloss Drop
Dorian Concept / The Nature of Imitation
喃語
北海道札幌市在住のポエタナティブ・ロックバンド。2010年に結成し、2012年秋より現在のメンバーにて活動中。2016年10月、下北沢SHELTERの25周年企画でのBiSHとの2マンライブのほか、左右、トリプルファイヤー、There There Theres、快速東京、Seagull Screaming Kiss Her Kiss Her、otori、SuiseiNoboAzなどジャンルの壁を越えた様々なアーティストと対バン。2016年11月2日、1stミニアルバム『説話』をリリース。2017年4月28日、札幌SPIRITUAL LOUNGEにて初のワンマンライブ「あぱ」を開催し、大盛況・超満員となる。2017年12月、術ノ穴よりリリースされたコンピレーション『HELLO!!!vol.10』に参加。ラップでも読経でもない朗読のようなボーカルをのせて、プログレでもハードコアでもないオルタナティブな楽曲を制作している。非常にオリジナルで、微妙にシニカルで、異常にテクニカル。週末はメンバー全員でヒグマの背中に乗り、ドングリを探している。