20210101

682(『MITOHOS』インタビュー:shiNmm)

 

あけましておめでとうございます、本年も宜しくお願いいたします!さて年明け1個目の記事ですがルロウズの事ではなく引き続き『MITOHOS』インタビュー公開します。自己犠牲とかでは特段なくてタイミング!

今回は山口のアンファンテリブルshiNmm。彼らは勿論、彼らがリードする現行山口のシーンは本当に独特で魅力的で、新しい感覚のオルタナティブたちが群雄割拠している印象で目が離せません(詳しい誰かにまとめてほしい)。

shiNmmは初めて音を聴いた時に心から吃驚しました。出る音に邪気や欲気がなくて、でも超オリジナル。そしてインタビューでも聞きましたがいちばん4人の良い瞬間だけを的確に捉えた、どこか涙の零れそうになるような刹那的な音像。4人がギッコンバッタン一生懸命紡ぐ、かけがえのない”バンド”なサウンド。でいて超ふざけてる(良い意味で)。日本のインディのバンドは音源だと大体音が気持ち悪くて、私はどれだけ好きなバンドでもほぼ盤では聴かないのですが、彼女たちの1stは音が気持ち良くて死ぬほど聴きました。USツアー中の砂漠800kmの地獄の行程でも聞きました。
今回は新アルバムレコーディング中の噂も聞く彼女たち、リーダーのgtやまざきまなぶ氏に話を聞きました。


shiNmmの音楽、それからバンドの生来的に持っている在り方みたいな部分に関して、傍目には奇跡のように思われます。

極端に遅いBPM、スキマたっぷり、そういう文脈では所謂”枯れたアンサンブル”なのに、どこか瑞々しいフィーリングや”青春”と言ってしまっても差支えないような刹那的な煌めき。バンドの成り立ちやここまでの音の変化について教えてください。


やまざきまなぶ(以下Y):shiNmmが今の演奏スタイルに至ったきっかけは、癖を漂白せずに、その癖から生まれる揺れやブレを活かす方向に向かい始めた所にあると思います。


もともとあるものをひたすらポジティブに活かす、ということなんですね。


Y:時間ごとに変化する僕たちの癖は脆弱で、メトロノームなどのスクエアな基準や制度に直面すると超えられずに死んでしまうものばかりです。しかし、演奏として成立させるには何か点や連続性が無いと困難なので、僕たちはそれをお互いの息遣いや間合いの中に見出しながら演奏しています。


サウンド面においてはスネアのピッチひとつまでまなぶくんがディレクションをしていると聞いてましたが、ライブではボーカルさないさんの謎そのもののモノマネコーナーがあったり、ヘンな息苦しさや気負いみたいなものがメンバー間にありません(水面下であるのかもしれないけど)。バンドを動かす力学のバランスについて考え方みたいなものはありますか。


Y:息苦しさや気負いが感じられないのは、無理をしないという考えが僕らの中にあるからじゃないでしょうか?

ちなみにゆかみりやのスネアのチューニングは、できないので僕がやってました。最近はゆかみりや自身がする様になってきてます。


あっ、そうなんですね。


Y:できないことをできるようにするよりも、できることの密度を上げていくみたいな。野放しの癖を更に豊かなものにするみたいなものが僕らのバランスでしょうか。


直近のライブではニューウェーブ/ストレンジ感の強い楽曲の印象がありますが、一方で1stアルバム収録の「ゆうれい」や「なんでなんだろう」などメロディアスでリリカルな側面もありますよね。サウンドにおけるインスピレーション、それから楽曲内で大事にしている事はなんですか。



Y:とにかく皆んなの癖や個性が響き合うような曲を作るようにしています。曲から個々人の役割を規定したり考えていくのではなくて、個々人から曲のイメージや全体像を考えています。

その手法にも限界を感じるので、新しく視野を広げるか角度を変えるか…その点について試行錯誤しています。


東京の人間からすると山口という土地には神秘のヴェールがあります。佐々木匡士さん、ドラびでお一樂さん、skillkills弘中兄弟、山本達久さん、そしてshiNmmの界隈でもfurateやelephant、ふーふーくうなどなどキラ星のように才能たちが割拠してます。住んでいる街からの影響、近しい界隈からの影響っていうのについてはどう感じられますか。


Y:上記の皆さんは本当に素晴らしいアーティストで、同郷ということを抜きにして尊敬しています。

僕は湯田温泉という地域のOrgan's Melodyというイベントスペースに居着いていて、shiNmmもそこを中心に活動をしてます。湯田温泉には所謂シーンみたいなのは無いのですが、無いからこそ色んな音楽が入り乱れていて、いろんな人が交流してて、そういう有り様にとても刺激を受けています。


東京だと母数が多いので近しい界隈ごとに蛸壺化/先鋭化してしまいがちなのですが、多様性とか刺激という意味では良し悪しかもしれませんね。


Y:そういうのはとても大切だなぁと感じます。


コンピ参加曲と並列で現在アルバムの制作中という話を聞きました。今後このバンドでどういう音を作っていきたい、どんな挑戦をしたいと思ってますか。


Y:アルバム制作は頓挫しかけていて、いま仕切り直ししようと思っています。僕はメロディ作るのが本当に苦手で、いままで避けて来たのでそう言った部分での響き合いに真剣に向き合いたいと考えてます。

次の作品では、荒々しいけど美しくて4人の確かな実態を掴めるような作品を作りたいです。


shiNmmの音にとって、あるいは自身にとってのオールタイムベスト5枚を教えてください。


Y:shiNmmにおいては構図や仕組み作りにおいて音楽以外からの影響が非常に強いので、そこも含めて挙げたいと思います。ベストな音楽については日々変わるので、今の形を築くのに特に影響を受けた作品を挙げました。

1.高野文子/棒がいっぽん

2.宮澤賢治/銀河鉄道の夜

3.Doit Science/information

4.わたなべよしくに/でもでもでも

5.日本民謡大全集


shiNmm
あまりにも無垢な佇まい、チャーミングであどけない4人が鳴らすのは90年代から現在、近未来までを柔らかく包み込む彼岸のアヴァンポップ。諦めと祈りが混在するドライに俯瞰したリリックとバンドミュージックの本質をメタ的に捉える達観したサウンド。


https://deaftouch.bandcamp.com/album/mitohos