20210112

683(『MITOHOS』インタビュー:ウサギバニーボーイ)

 

『MITOHOS』大好評!投げ銭などのサポートもありがとうございます。もう少しお金が溜まったらフィジカル化なども考えてます…!Bandcamp内でも日本リリースの注目作として取り上げて頂いてます。

さて今回もインタビュー公開します。広島の至宝ウサギバニーボーイよりリーダー高宮氏に話を聞きました。今回インタビューにあたり過去のものなども参考にしようと思って探したのですがキャリアの割にあまり包括的に話している記事が見当たらず、その意味でも当記事は割と貴重なものになるのではと思ってます。


バンドとしてのウサギバニーボーイはリーダーの高宮さんを中心に他のメンバーが「その時参加出来る人」のような柔軟なスタイルで活動していますが、それにしては徹頭徹尾コンポジションされたアンサンブルですよね。元々のバンドの成り立ちや現在のようなスタイルになった経緯を教えて下さい。


高宮(以下T):元々のバンドの成り立ちは大学の頃のサークル活動で始めたバンドです。そこから社会人生活、周囲の結婚生活など社会によくある岐路において御多分に漏れず、僕らも活動が少なくなっていったのですが、現在30歳くらいの子たちが大学生だった頃に知り合う機会があり、当時の大学生に支えられて活動を続ける中で、「俺もやりたい」「私もやりたい」をダチョウ倶楽部の伝家の宝刀的やりとり「どうぞどうぞ」を繰り返していたら上記のスタイルになりましたね。


生活環境の変化で止むを得ずストップするバンドも多いと思いますが、ウサギバニーボーイはクラブ/部活動的なシステムにすることによって新陳代謝を可能にしてるんですね。


T:当時の大学生は演奏力が高く、個性もあったので逃したら勿体ないという気持ちもあったと思います。現在はメンバーも少しづつ減っていき、流動的な箇所もあるのですが、だいぶ固定されてきました。


今回のメンバーはどうなのですか?


T:今回は僕とドラムはサキチヨ、ギターはオオハシくん、ベースはこうたくんですね。上記の話ではこうたくんがその頃の大学生ですね。オオハシくんはこうたくんより更に若い世代ですね。


最近やっているドラムのサキチヨさんとのデュオ編成でも、ルーパーを使ってシグネチャーサウンドと呼ぶべき複雑なギターのレイヤーを表現しています。瑞々しいメロディ、弦楽器の複雑なレイヤー、そして等身大でストレート、時にユーモラスな歌詞(またはタイトル)。といった3本柱を感じますが、サウンドにおけるインスピレーション、また楽曲内で大事にしているものはなんですか。


T:いつも最初は「こんな曲を作りたい」というようなイメージはあります。そのインスピレーションは最近であれば、twitterで見かけた音とか、久しぶりに聴いてよかった曲からだったりしますが、進捗が進んでくると「こんな曲を作りたい」から離れた着地をするのが常ですね。この離れた着地の位置が曲によって違うのが、毎回楽しみなとこではありますね。


また、楽曲内で大事にしていることは「演奏してて暇じゃない」、「ダサいのギリギリ」で作っていくことですね。よく「ダサい」に着地で足を捻ったことに気づかずに後から自分の音源を聴いて「これは…ダサいな…」となることもありますが…。


今回の参加曲「ステージ」は特に歌詞が感動的な仕上がりでした。ルロウズの参加曲も2020年という奇妙な1年を強く意識した、あるいはさせられた歌詞になってますが、ウサギバニーボーイの歌詞はもっと踏み込んだ、バンドとしてのライブハウスへのステートメントに思えます。その一方でこれもウサギのシグネチャーに感じますが、主語が曖昧になっていて歌詞と受け取り手の距離感が自由に設定出来る。歌っていることの解説なんて野暮だと承知の上ですが、このリリックについてエピソードなどあれば教えてください。


T:この曲は元々広島のヲルガン座の周年のためにアコースティックで作った曲です。なので、元々はヲルガン座という場所をイメージして作成してます。これをバンドサウンドにするときに2番の歌詞を変更しました。この歌詞変更のときにはコロナ禍であり、視聴した人と共有できるような風景をイメージしましたね。




この曲を聴いて大事な場所を想起する。という行為に繋がれば嬉しいな。と思います。


現在のバンドのアレンジメントについては完全に一人で作ってますか、それともサキチヨさんや他のメンバーのフィードバックがありつつ磨いていく感じなのでしょうか。


T:個人的には曲と歌詞、あとは自分のギターパートを考えて、あとはメンバーが好きに肉付けしてもらって、自分が思ってもいないような曲の仕上がりになる。というのが理想なのですが、メンバーから「曲作りに時間がかかりすぎる!」との指摘があり、これからはまずは一人で作り上げてからメンバーに渡すという感じにシフトしていこうと思っています。


分業的な編曲が理想なんですね。


T:ま、メンバーが好きに肉付けしてもらったものに対して「うーん」と言って「〇」をなかなか出さない僕が原因なんですけどね。


皆さんの活動している広島という街のシーン、またそこからの影響みたいなものについてはどうお考えですか。私からすると関西、四国、九州へのアクセスが良くて人口も多い、都会も田舎も混ざっている、可能性に満ちた場所に感じるのですが。


T:個人的には広島は東京文化圏の最西端だと感じることが多いです。なので、多くの地元文化が「東京に憧れて…」を下地にしているように感じています。不思議なことに広島より西は独自文化圏を出しているシーンが存在するのですが、広島は独自文化圏が小さいな。という印象です。


興味深い視点です。


T:これは先人となる僕ら含めた年配の人間が作った地元との繋がりの希薄さ、後輩の面倒見の悪さなども大きく起因すると思っているので、少しずつ是正していけたらな。と思いつつ、なかなか出来てないのが実情ですね。

土地的には指摘のとおり、様々な文化と混じり合える距離だと思いますが、「東京に憧れて…」を下地に敷いている反面、近郊都市には「広島であること」を強気なプライドとして持っているので、周囲の街からは嫌われている気がしますね。あ、途中から音楽の話ではなくて土地の話になってますね。


ライブでは定番曲もやりつつ、常に新曲に取り組んでいらっしゃいます。またコロナ禍の前は台湾ツアーなど海外での活動も視野に入れられてましたよね。(あとカレーを死ぬほど作ってる印象もあります)
今後出したい音のイメージ、活動のビジョンを聞かせてください。


T:音としては一音聴いて「あのバンドね」と思ってもらえるような音の作り方ができればと思っていますが、具体性はないですね。あと最近スタイルを守るという考えが強い人間のように自分を評価しているので、スタイルを崩すを目標に据えていかないとな。と思っています。

活動はどんどん国外にいきたいですね。世界を探せば、今のままの音楽でスタンディングオベーションされまくる地域が存在するのでは?と思っているので(笑)。


ウサギバニーボーイの音にとって、あるいは自身にとってのオールタイムベスト5枚を教えてください。


あまり音楽のインプットが多いタイプではないので、「おぉ」というものはないと思いますが…
・panicsmile+人間のスプリットのやつ/小粋なジョニーって歌ってるやつですね。
・小田和正/オフコース時代が一番かな
・foals/Antidotes
・climb the mind/ベレー帽は飛ばされてとかが好き
・don caballero/American don


ウサギバニーボーイ
広島を拠点に20人のメンバーが在籍し、流動的編成で活動するインディーロックバンド。単音を駆使した奇抜変態フレーズのアンサンブルからストレートでキャッチーなメロディに突入するという"ウサギパターン"をフルに採用したオルタナティブとポップのハイブリッド。