20181002

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『極東のイディオム/FAR EAST IDIOM』開催を記念してルロウズ新録『FAR EAST IDIOM』を公開してます。第一弾は"ムーンライト伝説""SMOKE ON THE WATER""PARANOID"の3曲。第二弾のもう3曲は完成次第UP、随時アナウンスします。

アレンジ、レコーディング、ミックス/マスタリング、すべてセルフプロデュース。…というと聞こえは良いですが、要はこんなバカな試みに乗ってくれる人がいなかったということ。。こういう時いつも「意味を求めて無意味なものがない」という坂本慎太郎氏の歌詞を思い出すものなのですが、ともかく孤独と戦いつつ制作メモ代わりのセルフライナーを残しておきます。

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カバー、コピー、モノマネetcをする人はこぞって原曲/元ネタへのリスペクトを公言するのがこの時代ある種の免罪符というか先受けのこの一手になっているようですが、私たちはその限りではありません。ただそれは楽曲をオモチャにするとかバカにするとかでは勿論なく、過度の好きやリスペクトはルロウズのフィルターを通す際に邪魔になってしまうので、良い意味で俯瞰出来る/アレンジのインスピレーションをもらえる/ルロウズなりの別の視座を作れる楽曲というのを選択してます。その点においてのみ、無意識ではありますが広義のリスペクトと呼べるものかもしれません、なるべくニュートラルな気持ちで向き合ってるつもりではありますが。

いずれにせよカバーで大事にしているのは「それをそのように演奏して楽しいか」を、なんならばバンドのオリジナル作より重視しています。
また録音についてはドラムのみスタジオ録音(回線の都合によりマックス6ch)、ギター/ベース/その他はラインのみ、ボーカル/コーラスは家で録ってます。バスドラムのマイクにはblueの現在廃盤となっているラクロスのボールみたいな丸いやつを使用。アクティブダイナミックなのでダイナミックなのに電源が必要というめんどくさいやつですが音は安定してました。それ以外はその辺にある57とかヘンなコンデンサとか使いました。

”ムーンライト伝説”
https://soundcloud.com/loolowningen/moonlightlegend
私は寺尾紗穂氏が大好きなのですが、「幼い二人」という曲のドラムとベースのシンプルな前奏を聞いた時にこの曲の歌詞と旋律が電撃的に閃きました。当初は「幼い二人」のサウンドに上田氏が休符を全て省いたボーカルを乗せる、ギターはナシ。以上。っていうスーパーシュールなアレンジを試してたのですが、人類単位で考えても2人くらい(赤倉と山本)しか楽しくないなって結論になって最終的にボツ。結果パンク/メロコア好きの血が騒ぎこういったアレンジに落ち着きました。歌詞が3番までしかないのは覚えられなかったからとこのアレンジ的限界のため。
マイナー調の曲をメジャー調にするのはカバーやマッシュアップなどの定番ですが歌詞の印象や響きが劇的に変わります。根が暗い人がカラ元気を出してる感じというか、お前急にどうした?って感じというか、そこで生まれる謎のギクシャク感/異化効果にはいつだってドキドキします。
「ゴメンね 素直じゃなくて」というアタマの一行は本プロジェクトの、というよりそもそもルロウズの全アウトプットのために存在するセンテンスじゃなかろうかと思うほどの驚愕のシンクロニティ。

録音は2テイクなので2分半で終わりました。小さな音で入ってるタンバリンが最高にハマってます。細かい打ち合わせをせずに録音に突入したためボーカルとコーラスのバランスについて今なお議論が分かれてる曲。歌まわりには12トラックくらい使ってます。


”SMOKE ON THE WATER”
https://soundcloud.com/loolowningen/smokeonthewater
ボブディラン氏の近年のライブの「サビになるまで/サビになってもライクアローリングストーンってわからない」っていう感じを目指しました。スリップとすら呼べない単純にシャッフルで裏返るだけのドラム、ただ気持ち悪さのみを表現するベース、ひとりかっこつけるソリッドなギター。積分系変拍子の場合はそこに意味や必要性を求めてしまう私ですが、リフが登場するタイミングで5/4になるのは完璧と思ってます。童歌の「あんたがたどこさ」と同じ。
ソロは意地で完コピしました。54-71の曲であった、クリーントーンの超小さい音で天国への階段のソロ弾いてるってやつのオマージュです。この曲のウィキペディアを読んだらクレイジーケンバンドの小野瀬雅生氏が「スモーク・オン・ザ・ウォーターを笑うものはスモーク・オン・ザ・ウォーターに泣く」と発言を残してる、と書かれていて、確かにリッチーブラックモアの手クセが凄くて習得が難しかったです。因みにルロウズは3人ともディープパープルは好き。でもこの曲は特に誰も好きではないようです。
アメリカで演奏した時は会場全員シンガロング。アンセムの魔力を感じました。

隙間が多いアレンジなのでドラムのダブリングやエコー/リバーブなどで無音部が貧しい感じにならないようにしようとしましたが技術的限界。脳内でディアンジェロのブラックメサイアに翻訳して頂ければ幸いです。この曲をミックスしていて欲しいプラグインが明確になりました。

”PARANOID”
https://soundcloud.com/loolowningen/paranoid
バンドでカバーをやろう、と思った記念すべき初作。当初ミーターズみたいなカラッとしたファンクを考えてたのですが、ウワモノにジャパニーズイングリッシュが乗っかると嫌な磁力とかムワっとした湿度が発生して、結果得も言われぬ引っかかりを持つブツが出来ました。
この曲は歌詞をずっと誤解してました。タイトルがパラノイド(偏執症者)だし、バンドがバンドだし、ボーカルに至っては生きたままハト食べる人だし、病的で退廃的な世界を歌ってるのかなって思ってたのですが、きちんと読むと無力な男のラブソング。それをあんな力技のトラックに乗せて歌ってるんだって知って衝撃を受けたのを覚えてます。
この曲のカバーでは特にエレクトリックイールショックの作品が秀逸だと思うのですが、甘んじて後塵を拝することにいたしました。

ドラムは思わず膝を叩くような最高のテイクを間違って消してしまったため別テイク。もしこのドラムをあまりよくないなって貴方が思ったとしたら、これの上位互換テイクがあったと思って頂きたい。山本氏の名誉のため。
ベースは上田氏のフュージョン/民族音楽趣味からすると真逆の漆黒のフレーズを無理やり弾いてもらってて、その無理してる感じ、イヤイヤやってる感じがほどよく出てるのではないでしょうか。
ジョンスペのACMEの1曲目みたいなサウンドを模索したのですが、まずギターの音から雲泥の差だったため改めて奥まったサウンドに変更しました。Mr.スペンサーはラインなんかで録音しない。と思う。本曲には間に合いませんでしたがブッカーTジョーンズ氏みたいなオルガンが欲しかったのでこっそり練習しています。