20161219

395(『CREOLES』深層にせまる①サウンド前編)

『CREOLES』発売から1ケ月あまり。既に手にとっていただいている皆さん本当にありがとうございます!そしてまだの方は是非。作り手ですからマヒしてる部分もありますが強烈に重厚な作品になったと自負しております。

発売と同時にツアーを開始したため、アルバム制作時のエピソードやメモなど断片的にtwitterでなぞることしか出来てませんでした。

結局は収録されてる音を、言葉を聴いて楽しんで頂ければそれでOKですし充分ではあるのですが、CDやデジタルを持っている方にはより深く/或いは違う角度からバンドに迫るトリビアとして、そしてまだこのアルバムと出会えてない方には興味を持つきっかけとなるかもしれない(ならないかもしれない)文章を今回から「『CREOLES』深層にせまる」シリーズとして気まぐれにしたためていきます。CDにはセルフライナーがあるのでなるべくそれとは被らない感じで…

「問いかける音楽」
「時代を流浪する、全ての人たちへ」

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Ⅰ.経緯と気持ち

『CREOLES』プロジェクトがスタートしたのは2015年初夏の頃。フルアルバムとしてはバンドのキャリア的に初ですがルロウズが3人になってから作品としては2作目のものです。
元々録音物と生演奏は完全別物派である私たちではあるのですが前作『PIDJINSONGS』では3人らしさに拘ったソリッドでタイト、モノクロームな質感を意識。それは前々作『MISTERIOSO』でやったことの反作用的な気持ちもあったのかもしれませんし、振り返るとルロウズのアウトプットは大なり小なり全てそういうものなのかもしれません。

『CREOLES』をカラフルで雑多な、珍しい色味の幕の内弁当のようなものにしようとは楽曲が揃ってきた当初から思っていました。エンジニアの鈴木鉄也氏(MONKEY MAJIKなど)とのタッグも3回目で「こうすればこういうことが出来る」「こういうムチャなオーダーはギリ怒られない」という知識やコミュニケーションの蓄積もあり、正確な語彙や表現で共有出来るようになり以前より手探り感少なく求める音にアクセス出来るようになったことは凄く大きいです。

また特筆すべきは主に赤倉、山本両氏を襲ったディアンジェロショック。2014年末に突如発表された『BLACK MESSIAH』、M1~3の湿度や汗、ホコリのような生々しい感じと神々しい感じが共存している感覚、濃密な暗闇からニュッと出入りするロックのようなR&Bのようなサウンド、揺らぐグルーヴ。最初聞いたときはモワッとしてて???という感じでしたが耳が慣れるにつれ静かに深く衝撃を受けていきました。

今回リファレンスとして意識して聴いたものから無意識に反映されてしまったもの、あるいは意識したけど誰もそう思わないものまでメンバー各々色々ありますが精神性や美学などを中心にいちばん影響を受けた音です。

このアルバムの約半年後にceroの『obscure ride』がリリースされましたが特に音と音の間の部分、無音の部分の処理の感じなどにはすごく先を越されている感覚がありました。マスタリングエンジニアが同じスチュアート・ホークス氏だったのもきっと関係してると思いますがミックスで千葉に行った際メンバーと鈴木氏とカーステで聴いてああでもないこうでもないと批評した記憶が。

D'ANGELO & THE VANGUARD『BLACK MESSIAH』
THE BEATLES『REVOLVER』
MILES DAVIS『GET UP WITH IT』
THE FLAMING LIPS『THE SOFT BULLETIN』
RADIOHEAD『KID A』

このあたりが制作にあたり特に意識して聴いたアルバムですがブラックメサイア以外はクラシック化しているので今後も拠り所にするとは思います。「群盗」「鋏のあと」「あとで」「黒白の虹」あたりに顕著な影響を見つけるのは容易でしょう。

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Ⅱ.参加ミュージシャン

アルバムのテーマとしては幕の内感、全体を統括するサウンドのテーマとしては「滲み」「煙たさ」「煌き」といったもの。その上で前作からの反作用として心ゆくまで宅録の極みを、足し算をしつくしてやろうと思ってました。と同時に外部ミュージシャンの起用も躊躇わずにやってみました。

ケビンマキュー(key,acc)。
今回のレコーディングでキーボードがいかに楽曲のカラーを変えうるかを改めて凄く認識出来ました。同じリズムの旋律を違う楽器で鳴らしたり重ねたりした時の印象の変わり方、実験しながら豊かな響きを追求出来ました。「あとで」「衛生的な人」「リボン」はケビン前、ケビン後で全く変貌しました。携わってもらったパーセンテージ的に共同プロデュースに近い極もあり。比喩でなく第4のメンバーであり裏の主役です。彼がアメリカ在住時代に参加していたCapillary Action『so embarrassing』のストリングスアレンジが秀逸だったのでずっと一緒にそういうことをやりたいと思っていたのでうれしかったです。

?meytél(vo)。
無国籍感、浮遊感の高い普段の彼女の佇まいそのままに楽曲の核心へアクセスしてもらいました。「リボン」での非現実的、メタフィジカル的な質感はもちろん、「バグとデバッグ」「レクイエム」ではボイシングのアレンジもしてもらってます。即興的な要素もごくうっすら。

根本潤(sax)。
今回レコーディングメンバーの中で唯一アカデミックなキャリアを持たない、ある種ワイルドカード的存在な根本氏ですが「リボン」に揺らぎながら彷徨うような孤高の魂を込めていただきました。ソプラノサックスは私にとって反射的に=ジョンコルトレーン=神聖、という等式が脳内に出来ちゃうのですが思い込みだろうが何だろうが美しいテイクが収録されました。コーラス部最後のフラジオ音は録音時はミス扱いだったのですがミックスを進めるにつれ聴くにつれ必然性や美しさを感じていったので本テイクで採用しています、結果的にこの楽曲のハイライトとなりました。

松原明音(tp)。
東京-京都という距離はこの時代ほぼ全く問題にならないもの。DAW万歳のテイクを西院ハナマウイスタジオにて収音。あかね氏はじめ京都のキツネの嫁入りはルロウズの良き理解者で保護者、今回こういう形でさらなるご縁を頂けて幸せです。

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次回はサウンドさらにつっこんだメモ、また各楽曲について触れていきたく思っております。

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