20210918

705(MITOHOS II インタビュー④THE RATEL)

 

MITOHOS IIインタビュー今回もやります!ミステリアスな音像と孤高のトーン、そして裏腹にフレンドリーなバンドのムード。東京に立ち昇る巨大な謎、THE RATELより池田若菜(vo,fl)を中心にインタビューをしました。メンバー各々多方面で活動する中で、敢えてこの5人が集まる理由とは。当インタビューシリーズ初の複数人からの回答も頂きましたので併せてご覧ください。


__THE RATELは2017年から(水面下で)活動を開始していたようですが、吉田ヨウヘイgroupから池田若菜さん(vo,fl)、内藤彩さん(vo,fg)が脱退したのが2016年です。その頃から2人で新しい音を作るイメージがあったのでしょうか、またバンドの成り立ちや現在のスタイルになった経緯などを伺えませんか。


池田若菜:彩ちゃん(内藤彩)とは大学時代からの友人だったこともあり、2017年頃になんとなく2人で飲んでいるときに、また一緒にやりたいねと話したのがTHE RATELを始めたきっかけでした。計画的に、シリアスにスタートしたのではなく、その場のノリが9割です。でもその時のことはよく覚えていて、帰る家のような自分のバンドがあったら楽しそうだなあと思ったし、彩ちゃんもそうだったみたいで、2人ともかなり酔っ払って大盛りあがりしました笑。

その後メンバーチェンジなども経て今のメンバー(池田若菜・富樫大樹(dr)・内藤彩(vo/fg)・畠山健嗣(gt)・溝渕匠良(ba))に落ち着いています。


__池田さんは即興や現代音楽のアンサンブルなどの活動も盛んにされます。一方でTHE RATELはギター、ベース、ドラムの3人の出身も含めど真ん中ではないもののロックミュージック的なサウンドを志向してますが、コンポジションやサウンドの舵取りは誰がしているのですか。


池田:バンドを始めた当初は私が作曲をしていましたが、健嗣さん(畠山
健嗣)が加入してからは、私と健嗣さんで作曲をしています。歌詞については彩ちゃんを中心に健嗣さんや私がサポートに入って、3人で作業している感じです。

曲によって異なり、ドラムやベース、ギターのリフ、音色まで細かく指定する場合もあれば、骨組みだけをメインの作曲者が作ってフレーズを各メンバーに任せる場合もあります。どの曲もコンセプトがあって作るので、何もない状態からセッションしてフレーズを作るということはなく、作曲者が事前に意図を伝えてフレーズを考えてきてもらう、のがいつものスタイルです。


__現在は2人でそれぞれ作曲をされているのですね。池田さんはどういう発想でアプローチしているのですか。


池田:健嗣さんがどうかはわからないのですが、私はメンバーありき、その人が何が得意で、どんなことをやってもらったら面白くなりそうかを具体的にイメージして曲を作ります。なので一方では現代音楽などのアンサンブルもしていてTHE RATELのサウンドには距離がありますが、それは「この人となら、こんなことがしたい」という人ありきの考えで成り立っているからです。どんなプロジェクトやバンドにおいても、誰かと一緒にやることで生まれるアンバランスさを許容できるデザインの音楽がすごく好きです。


__特にライブを見ると、フロント2人のミステリアスでダークなムードと、リズムやギターのドライで覚醒的なアプローチの対比が非常に印象的です。バンドでのインスピレーションや楽曲内で大事にしているものはなんですか。


池田:前の質問の回答とも少しかぶるのですが、全体のバランスについては、このメンバーでやっていたら結果的にそうなった…という回答が最もフィットします。目指してこうなったわけではないので、説明が難しいのですが。

インスピレーションについては、その時期によって違ってて、最近聞いてて面白いと思ったレコード・映画・本とか色々です。


__独特なサウンドにまとめる秘訣のようなものはあるのでしょうか。


でも楽曲内で大事にしているもの、ということについてはいくつかあります。
全体の音量の作り方にはこうしたいというイメージがあって、今は1曲の中に音量のダイナミクスがあるのがかっこいいなと思っているので、作曲時に取り入れたり、演奏時に気を付けてます。

曲の構造についてもメリハリをつけすぎず、ちょっと退屈に感じるような時間を入れるようにしています。この2つが主に大事にしていることかもしれません。


__コンピ参加曲「十字路」についても聞かせてください。霧の向こうを漂うムード、ボーカルとシンセ(エフェクティブ木管?)が等価でレイヤーを作るサウンド、クールで醒めた感覚、癖だらけのコンピの中でもまた全くベクトルの異なる音楽と思います。録音時のエピソードなどを教えてください。


池田:「十字路」は作曲を私、歌詞を彩ちゃんが担当しました。録音とミックスを健嗣さんが担当してくれたので、健嗣さんに諸々を答えてもらおうと思います!


畠山
健嗣:畠山です!!こんにちは!
今回は録音~ミックスを自分達のみでやってみようという話が当初からありました。
ドラムに関してはリハスタで録音していますが、それ以外の楽器は各メンバーの自宅などで各自録音しています。vo彩ちゃんの歌も彼女自身による宅録ですが、肩の力の抜けたテイクが送られてきて宅録も良いなあと思いました。

この曲自体のぼやっとした不透明な要素をそのままサウンドに反映させるべく、判然としない飽和したミックスに仕上げています。(というかそのようにしかならなかった)


__並行してアルバムの録音を進めていたと伺っていました。ツバメスタジオでの録音風景や実験を重ねているのもSNSで見ています。そうした新作含め、今後出したい音のイメージや活動のビジョンなど伺えませんか。


池田:とりあえず、アルバム制作にめちゃくちゃ時間をかけてしまったので、早くリリースしたいです。現在まだ作業中なので、それ以外のことは考えられない状況ではあるのですが、一旦落着したら、またメンバーと最近のお気に入りの音楽や映画などの話をしながら次どんな曲を一緒に演奏したら良さそうか考えて、新しい曲も作りたいです。
あと海外でライブしたいです。


__自身にとってのオールタイムベスト5枚を教えてください。



せっかくなのでメンバーに1人1枚づつ選んでもらいました!


Robert Wyatt「Cuckooland」
聴いてると気持ち良く入眠できる。発売当時に買ってからずっと愛聴してます。(畠山)


10cc 「The Original Soundtrack」
「I'm Not in Love」がこの世で一番好きな曲な可能性あります。(溝渕)


sora「re.sort」
「revans」はずっと目覚まし音にも設定しているので流れる度に気持ち良く起床できる。回数的には1番聴いてるはず。(内藤)


大友良英「連続テレビ小説 「あまちゃん」 オリジナル・サウンドトラック」
1番好きなものは決められないので、今1番ハマっているものにしました。じぇじぇじぇ(とがし)


Duke Ellington & His Orchestra「Lady Of The Lavender Mist / Don't Be So Mean Baby」
エリントンの中で特に好きな盤です。(池田)

20210915

704(MITOHOS II インタビュー③YOLZ IN THE SKY)

 

"MITOHOS II"発売から2ヶ月、ロングテールでDLされてます。DEAF TOUCH RECORDSでは本日GLDN、PAKK、US:WEの日韓台3組によるスプリットのリリースが。レーベルメイトとしてカタログが賑やかになっていくことがとても嬉しいです。

さて、更新頻度は少ないですがMITOHOSインタビュー続きます。今回は大阪のリアルオルタナティブ、YOLZ IN THE SKYよりボーカルのマギー氏に回答を頂いてます。まさかのオリジナルメンバーでのカルテット編成復活からバンドの頭脳であった柴田健太郎(gt)の脱退まで、ここ数年公式で言葉が残っていなかった部分の空白を繋ぐ貴重なインタビューではないでしょうか(当社比)。



__私は初期の4人編成の頃から、3人になり、2人になり、そして4人に戻り、ってところまで一通り全ての編成でのYOLZ IN THE SKYのライブを幸運にも見られています。私としてはギターの柴田さんとの2人編成の頃の音楽性から4人に戻った時に一回初期のサウンドに回帰したのが、そして今回3人編成での初音源が生楽器の使用の少ないサウンドに再びなっていたのが非常に印象的でした。元々はギターとドラムから曲を組み立てる、と聞いていたのですが、現在3人編成ではどういうアプローチで作曲をしているのでしょうか。


マギー:柴田の脱退はとんでもなく大きい影響です。柴田が抜けてからしばらくの期間は特に曲も作らず何をするわけでもなく3人で集まっていました。室田(Ba)と平瀬(Dr)は大体がよくわからないことでヘラヘラして過ごしてるんですけど
そのうち平瀬が"こんなドラム考えたよ〜"とか、室田が"ではベースはこんな感じでどうかな?"とか、そのうち平瀬が丸々1曲作ってきたり、室田が丸々1曲作ってきたり、それらの曲の部分部分を使って新しい曲になったり、3人になってからは決まった作り方がない形で曲を作っています。
こういうところは今までになかった変化した部分だと思います。


__試行錯誤をしながら新しいヨルズを作っているんですね。


マギー:現在の3人編成では先ほどのとても変化した部分もあるんですが、一方であまり変わってない部分もあります。それぞれがフレーズを考えて、組み合わせて変化させてというところを継続しているところです。軸となる部分を一旦決めて、みんなの感覚で一歩一歩作っています。

『MITOHOS Ⅱ』での「Ooh」は生楽器の無い曲ですが、生楽器のみを使う曲もあったり色々試しながら作っています。


__2003年結成なので、ちょっと気は早いですがもうすぐ活動開始20年です。外野の人間としてヨルズインザスカイに結成当初から一貫して感じるのは群れない姿勢、そしてサウンドの変化を恐れず、むしろ積極的に飛び込むオープンマインドですが、マギーさん個人としてこのバンドで変わらず大事にしている部分、それから考え方が変わった部分があればそれぞれ聞かせてもらえませんか。


マギー:ずっと変わらず大事にしている部分はバンドを始めた時の感覚です。

それはメンバーと音を出すだけでワクワクするとか、みんなの色んな異なる考えが合わさって曲として形ができていくことに夢中になるとか、その曲を演奏したり録音したり聴いたりして自分で感動して、人に聴いてもらいたくなったり、そんなところです。

変わった部分はElektro Guzzi(オーストリア・ウィーンのバンドでギター、ベース、ドラムでテクノを演奏する3人組)の作品に参加させてもらったり、Limited Express(has gone?)のライブのステージに出演させてもらったりなど、YOLZ IN THE SKY以外のこともやってみようと考えるようになったところです。

考え方が変わったことに特にきっかけもなく、単純に"面白そうかも"と感じることはどんどんやりたいと思ったからです。


__春頃に私がコンピへの参加を打診して、ご快諾頂いてからしばらくして柴田さんの脱退の話と改めて3人編成での参加について伺いました。コンピへの参加曲「Ooh」は時系列でいうと4人の頃から出来ていた作品なのでしょうか?今回の録音にまつわるエピソードなど含めて教えて頂けると嬉しいです。


マギー:「Ooh」 は去年末に柴田が抜けて3人になってからの曲です。新しくできた曲たちの中から選んだ1曲です。

声の録音と曲のMIXは荻野真也くん(サウンドエンジニア)にお願いしました。
彼は赤倉さんと同じようにYOLZ IN THE SKYの4人→3人→2人→4人の全ての編成の音とメンバーそれぞれの事を昔からよく知ってくれているので、今回の新しい編成での初音源にぜひお願いしたいなと思いました。
柴田との2人編成の時のライブでは彼がP.Aの時もあったり声の録音をしてもらうこともありました。ElektroGuzziの作品の参加時に声の録音をしてもらったりもしています。


__マギーさん個人としても現在SAOLA101というプロジェクトをUxDxN氏とやっていたり、先ほどお話が出ていたElektro Guzziへの音源参加があったりと、バンドと並行して活動してらっしゃいます。それぞれバンドとはアプローチを変えていますか、それとも天然でぶつかっていく感じなのでしょうか。


マギー:アプローチとか天然とか特に何も意識していなかったですが、言われてみると全体に対して自分はどういたらいいのかなと考えたりします。

人と会話する時に組み合わせや場面によって、"もう少し話したいな"とか"もっと聞いていたいな"とか"沈黙も心地良いな"とか"黙らざるをえないな"とか、そんな感じに近いかもしれないです。

でも、わからないです。はっきりとした区分けはしていないです。


__カットアップされたようなマギーさんのリリックのインスピレーションはどこにあるのでしょうか、また響きや意味など、大事にしているのはどこですか。


マギー:デペイズマンの要素が大きいのかなと思います。カットアップされたようなところもありますね。

今ぼくは京都に住んでいて、鴨川という京都市内を南北に流れる川沿をよく歩くんです。で、季節・曜日・昼夜問わず、いつも鴨川沿いには川に向かって色んな人が座っています。あらゆる年齢・性別・人種・ルックスの様々な人が、1人だったり複数だったり、色んな組み合わせで川に向かって座っています。

その人たちの横を川の流れと逆の方向にいつも歩くんですけど、色んな人たちの色んな会話の断片が聞こえてきます。その聴こえてくる言葉とその時の季節や気温や気圧や聴き手としての自分の体調が相まって、断片たちに刺激を感じ始めるんです。

その感じ方に正解も間違いも無く、良いも悪いも無く、好きでもいいし嫌いでもいいし無感動でも無関心でもいい。

で、"今日も散々たくさん歩いたけどどこにも辿り着かなかったなー"と、感じながら家に帰ったり帰らなかったりする。そんな感じがとても好きなので、断片的な、どこかカットアップされたようなものにつながっているのかもしれないなと思いました。


__直接的なテーマというよりは、巨大なムードや空気感、そうした抽象的なものからインスパイアされるということなんでしょうか。


マギー:こどもの頃から人に対して何かを言うことが好きじゃなくて、人に何かを伝えたい欲求もあまり無く、でも人に混ざりたい気持ちはあって、ただ違和感はあるみたいな、それがどこか関係しているような気もします。


__ライブ活動など難しい昨今ですが、最新編成であるトリオのヨルズとしての今後はどういう予定なのでしょうか。スタジオ録音など期待していいのでしょうか。今後出したい音のイメージや活動のビジョンがあれば言える範囲でいいので教えてください。


マギー:ライブを中心に活動していきます。もちろんスタジオ録音もしていきますし、新しい作品の発表もしたいです。

曲を作ってステージで演奏するっていう本当に普通の事なんですけど、それがやりたいです。


__自身にとってのオールタイムベスト5枚を教えてください。


マギー:
Billy Elliot(リトルダンサー)
Clash / the clash
Give'em Enough Rope / the clash
London calling / the clash
Sandinista / the clash

20210901

703(MITOHOS II インタビュー②Furate)

 

大好評!Bandcampのジャパンタグでトレンド入りも達成!ジャパニーズオルタナティブのコンピ決定版"MITOHOS II"は皆さんもうチェック頂けましたでしょうか。

ちょっと時間空いてしまいましたが参加アーティストのインタビュー第二弾いきます。ルロウズの情報をフォローしてくれてる方には山口が熱い、というのは既にお馴染みかもしれませんが、shiNmmに続いてとっておきのバンド、Furateのギターボーカルかねこゆうき(@kogumayuki)氏にインタビューさせて頂きました。


 *


__私はshiNmmとの出会いを通じてfurateを知りました。ベテランのようなサウンドの脱力感や引き算を怖がらないアレンジ、そして皆さんの年齢的にはきっとリアルタイムでないはずの通底和音として流れる90'sのテイストなど、どこを切っても2021年に最前線で活動する20代前半のバンドとして良い意味で違和感を感じます。皆さんのバックボーンや結成〜現在までの経緯などを伺えませんか。


かねこゆうき:僕たちの結成は単純で、大学の同じ軽音楽部にたまたまいた三人を誘いました。最初の頃はFurateという名前ではなくて、現リードギターの秋山くんをボーカルギターにして僕がリードをしようと思っていました。というのも、メンバーの三人はどちらかというと、andymoriやaikoやマスロックなど邦楽を聴いていたし、秋山くんもボーカルとしてナードな良い雰囲気を持っていたので、そこを中心に活かしたケバブジョンソンみたいな音楽をしたいなと思ってました。 

しかし、やっていけどもパッとしなくて、なんか違うなーと思ってました。まず僕が人の歌うメロディを考えられないし、日本語のリズムで歌にするのが難しいし、詞を書けないし、なによりリードギターを弾けませんでした(笑)僕自身がこれから先の姿を想像できない状態だったので、みんなも良くわからんみたいな感じでした。


__最初からこういうスタイルを志向していたわけではないんですね。


かねこ:それでもしばらくやっていたんですが、ある時当時のバンド名がダサすぎるってことで、名前を変えることになり、それを機に思い切って僕が歌って好きなように作る感じにしようと思いました。僕はUSの90年代が好きだったので、そこにある色々な雰囲気をベースに好きにやってみようと思いました。そこから今のFurateという名前になりました。

それから現在までのFurateは、思い返してみると、僕が三人に好きなことやアイディアを押し付けて、三人は意味がわかりませんっていう顔をしながら何故か良いと思ってやってくれていることで成り立っています。


__脱力した感覚、ギターのアンサンブルと歌が並列にある感じ、いまのFurateサウンドのこの辺のフィーリングはかねこ君発信なんでしょうか。


かねこ:形として90’sの雰囲気があるのは、単純に僕が好きだからそうなっていると思います。他のメンバーはどちらかというと90’s USの音楽に馴染みがあるわけではないですが、僕から見た90’sのイケてなくて、ナルシストで、ナードだけど工夫して自分たちの好きなことをやっていきたいという雰囲気は、みんな共通する部分があるのかなと思っています。僕自身も、音楽ってもっとすごい人がやるものだと勝手に思っていたんですが、90’sの音楽や時代の雰囲気を知ってからこんな感じでも好きにやっていいんだと思えたのが好きな所です。

正直音楽的なことに関して、僕は普通より全くわかっていない方だと思います。なので逆に音楽的な?足し算が苦手で、引き算しているように見えるのは単純にできる事しかやっていないのが理由なのと、間近で同じ山口のshiNmmを見ているので多分一般的な音楽の感覚がバグっているせいだと思います(笑)。そのおかげで自由にやれている感覚があります。

単純に好きなことをやっていく先に90’s の音楽のような形があったということと、一般的な音楽の形にとらわれず、良いと思える何かを自由に追える環境がいまのFurateをつくっているのかなと思います。


__7月にFurateは2ndEP『Those In My Tin Case』をFRIENDSHIP.よりリリースしています。録音時期は今回のコンピの曲と近いのですか。


かねこ:実は、2ndEP『Those In My Tin Case』の録音自体は一年前くらいに終えていて、僕が出し渋っていたせいでリリースが遅れました。 一番最初に出したミニアルバムのrec&mix 、ディレクションまでをshiNmmの学さんにお願いしたので、今回は後輩でエンジニアの仕事を始めた藤井心くんにお願いして、自分たちでディレクションしながら作っていきました。


__そうなんですね。EPで
はライブの定番曲を軸に、ライブ感を真空パックしたロウでドライで素朴な鳴り、そして本丸氏の重いドラムが好印象でした。


かねこ:当初の目標は、Furateらしいルーズさを意図的に残した、良い意味でちゃんとしていない音源をつくりたいなと思っていました。しかし、やっていく中で僕たちらしさとはそもそも何なのか?と考えだしたり、ただのミスともとれる演奏の揺らぎやミスタッチをどこまで「あり」として残すのかに悩みました。

そもそも、録音している期間がまあまあ長かったので、その間にも曲はアレンジされていって違う様相になっていましたし、録音の中盤辺りでは、ギター歪ませすぎるのダサいなとか、音でかいのうるさいなとか、自分たちに必要な音数だけでやってみたいな、とか考え方もどんどん変わっていきました。なので、6曲それぞれに違う時間と場所と考え方が反映されているので、アルバムとしてまとめるのに苦労しました。 


__〆切を設定した短期集中みたいなスタイルではなく、気の向くままに、そしてその時の感覚に素直にレコーディングを進めた感じなんですね。どういうディレクションをしたのですか。


かねこ:一番最初に録った曲は「My Name Is Your Name」で、録音機材もまだ整っていなくてアナログ感が一番強い曲になりました。それ以外の曲は録音機材が新しくなって、少しづつ録音できる幅や音が良くなっていきました。ですが面白いことに、一番音が悪くて録音できる幅も少なかったこの曲が、全体を通してみたときに一番Furateらしい曲になったのかなと思いました。

それと「The Frog Song」は、Daniel Johnstonの「Love Forever」にしたくて、音や雰囲気をかなり意識しました。録音する上で音と雰囲気にこだわりがあったり、めっちゃ低い声をかぶせてみたり遊びも多かったので、そういう意味ではこの曲もFurateらしい力の抜けた遊び感が出せたのかなと思います。

録音の過程で曲に対する方向性が変わったのが、一番目の「Robin Hood」と最後の曲の「Roll In and Dive (Slow Walking)」です。先ほど言った、ギター歪ませすぎるのダサいなとか、音でかいのうるさいなとか、自分たちに必要な音数だけでやってみたいな、というのがバンドの方向性になってきて、より演奏の息遣いやフィジカルみたいな部分を出せないかなと思って録音しました。

「Roll In and Dive (Slow Walking)」は、前回のミニアルバムに収録されている同じ曲をアレンジして、過剰に歪ませず音も少なく小さくして、できるだけマイナスした上で残ったものを大切にしたいという思いでやりました。


__その話を伺った上で曲を聴いてみるとアルバムの印象が変わります。実験などを経て、より自分たちのアイデンティティに向き合うようになったんですね。


余談ですが、この曲を録音しているとき面白かったのが、ライブではしないコーラスをドラムの本丸ちゃんにお願いした時のことです。僕は歌詞とか全然伝えてなくて、なんとなくのメロディしか教えてなかったので、大丈夫かなと思っていたんですが、意外にも本人は自信満々に絶妙に間違っている歌詞を歌っていて、その度胸すごいなと思いワンテイクくらいでOKをだしました。なんとなく、この本丸ちゃんの素直な度胸にFurateの曲やノリは助けられているんだろうなと思いました。 


__外野ながらすごくわかる気がします。本丸ちゃんは他のメンバーのひねくれた感覚をポップにアウトプットする、そういうバランス感覚を持ってると思いますし、Furateのもつバンドらしさを象徴していると感じます。


かねこ:そんな感じで今回のアルバムは、ライブでやっていることをどう録音という形で表現するのかという問題を抱えながら、試行錯誤している過程がそのまま形になったなと思いました。それもエンジニアの心くんが、僕のよくわからない何か良いという感覚や言葉に悩まされながらも音源らしい形にしてくれたおかげだと思います。作品として、音源をつくる難しさがとても分かりました。


__”MITOHOS II”の参加曲「Never Let It Go」はshiNmmの学くん(やまざきまなぶ(gt))がエンジニアと聞きました。EPでの経験値を踏まえて、今回はどこにフォーカスしたのですか。


かねこ:コンピレーションの参加が決まって、エンジニアはもう一度学さんにやってもらおうと思いました。とにかくこの曲のキュートさを出すことに全力を注ぎました。録音にはメトロノームを使わず、曲のノリや雰囲気、この曲のキュートさはどこなのかを一からみんなで詰めました。

学さんとのレコーディングは、前回もそうでしたが、今まで演奏していて気づかなかったところを発見したり、そこから曲の解釈が広がっていったり、自分たち自身について新しく知っていったりする不思議な作業になります。もちろん、音源ができあがるという点は変わらないのですが、それまでの過程がとても自分達にとって大事で、録り終えた後にも色んな意味で繋がっていくレコーディングになりました。


__新たな発見という事ですが、具体的にはどういう部分ですか。


かねこ:実際、本丸ちゃんはどうしても謎の加速をするんだなとか、ベースの音の降っていく部分から立ち上がりをばねのようにつなげると気持ちよく転がっていく感じになるなとか、録音しながら気づいたりする過程がとても楽しくてワクワクしました。そうした中で出来上がった結果として曲があるのですが、全部録り終えた後に「めっちゃ可愛い!」ってみんなでテンション上がった時録ってよかったなと思いました。世に出すので、もちろんどう思われるんだろうか気になりますが、なにより自分たちが好きだと思える音源ができたことが嬉しかったですし、それで終わりではなくてこれからやっていく中でこうしようという話に発展したのが良かったです。 

依然、自分のこだわりに近づけるための音作りやアイデアに関しては苦手のままで、学さんとのやりとりを通して大部分まかせきりでしたが、次回はそこも含めてやっていけたら良いなと思いましたし、自分たちはまだまだ音を使ってやれることが沢山で、自由に遊べるんだなと思いました。


__音楽を街単位で区切るのは無粋とわかっていながらも、”MITOHOS”はそこにあるかもしれない物語やムードを汲み取りたいですし、やはり、どうしても山口のシーンは調べれば調べるほど面白いです。より天真爛漫に自分たちの作りたい音に向き合ってる感じ、そして近いバンドたちと共鳴、あるいは切磋琢磨して影響しあっている感じ。現在の皆さんの周りの動きについてどうご覧になってますか。


かねこ:僕がそもそも音楽を本気でやりたいと思ったきっかけは、大学時代にshiNmmのライブをみたことが大きくて、全然普段聴くような音楽じゃないのに何故か胸に響いたことが始まりでした。大学という場もそうですが、湯田のOrgan’s Melodyはジャンルとか、もっと言えば音楽とか関係なく好きなことをやっている人がいて、互いに面白かった話をしたり興味のあることを話したり、それぞれの音楽の先にみているものにグッときたり、影響しあっているように思います。 先輩のelephantやshiNmmも、後輩でいえばAyatoも、Furateとは全然ジャンルが違うけど、ジャンルでくくるのが野暮だなと思いますし、別のところで大きく共鳴しているのかなと思います。

ですが、実際世の中がこういう状況で、そういった集まれる場が少なくなっている実感はあります。本当は、僕がshiNmmと出会ったように、下の世代へとつながっていけたらなという気持ちはずっとありますが、今までとは違う形を模索しながらやっていかないといけないなと思っています。それは多分、僕の周りの人たちも同じで何が正解か分からない中で模索しているんだろうなと思うので、いつか芽がでて面白い形で現れたらいいなと思っています。それは、コロナになる前からもそうですが。


__pavementは4枚目、5枚目のアルバムで録音芸術を突き詰めるような作風になり解散しました。Beckはいまやニューウェーブスターのようなサウンドに変貌しています。furateの今後の作品のビジョンは今のギターオリエンテッドなアプローチをより突き詰める感じなのでしょうか、それとも新しいサウンドを志向しているんでしょうか。


かねこ:多分、今までもこれからもそうだと思いますが、その時一番好きなことを僕たちがやるならどうやるだろう、と面白がって考えながらやっていくと思うので、音楽的にこうしていきたいというのは僕にも分からないです。

ですが、先述したように僕はまだまだ音楽のことを知らなすぎるし、ずっと曲らしい曲を作りたいって気持ちがあるので、どんな形をしているか分かりませんが、僕たちの息遣いみたいなものを音で前回よりも表現できるようになっていけたら良いなと思います。

その過程で、もしかすると目指すところは、音楽を使って一つのまとまった作品として一貫した何かを表現したいって思えるようになることなのかなと思います。言って、まだ音楽をやりだしてようやく始まったくらいの所に居るんだろうなと思います。


__自身にとってのオールタイムベスト5を教えてください。


かねこ:やはりなという感じでしょうが、、、 
1、 Pavement / Easily Fooled
2、 Beck / Teenage Wastebasket
3、 The Velvet Underground & Nico / I’m Waiting for the Man
4、 Beat Happening / Indian Summer
5、 Daniel Johnston / The Spook



Furate
2018年から山口県山口市を拠点に、東京、大阪、京都、福岡、熊本、などで活動する四人組。 90年代USのDIY精神に影響を受けながらも、現代に生きる自分たちがやる意味をひたすら模索している。 主に影響を受けたアーティストは、Pavement、Beck、Beat Happening、Lou Reedなど。

20210815

702(大阪〜静岡ツアールポ)

 

8/12 東京→浜松

今回のツアーが決まったのは5月頃の話。その頃はコロナ禍についても依然予断は許さない状況ながらもポジティブなニュースがちらほら出てきていて、欧米圏でのフェス/ツアーが復活、とか、出遅れ感がありつつも国内でもワクチンが流通し出したり、とかで、全国各地のイベンター、ブッカー、バンドたちも8月以降の希望的観測を込めてスケジュールを組んでる人たちが多かったように思います。

しかし8月中旬現在のこの感じ。私個人としては2度接種済みだったのもあり、ツアーに関してニュートラルだったものの、当然自分ひとりの世界で完結する話でもないし、宣伝もしづらいし、当然主催や会場にとっても綱渡りの、精神の擦り減るプロジェクトですよね。その辺のメンタリティ含めた話は全員がしてると思うのでここでは割愛しますが、正しさ、確からしさ、についてはわかりません。

さて、8/13の大阪公演について、①スーパーお盆のど真ん中②蔓延防止等重点措置、それから緊急事態宣言など刻々と変わる状況、に振り回されて開演が17:00と決まったのが8/上旬。実は数年前にも8/13大阪公演をやったことがあって、その時は地獄渋滞により13時間くらいかかった記憶があったので、基本我々は前ノリをしないタイプだったのですがそうも言っておられず、さらに8/14静岡公演も昼公演ということで、検討の結果「ちょうど中間くらいの距離になる浜松で2泊する。」というプランにしました。野口号は山本号と違い軽自動車で積載量も限られるため、私物のバッグを宿に置いていける、夜走りで変な時間に大阪に着いて時間を持て余すこともなくなる、いい感じに日を跨いだ直後くらいに高速降りれば安い、いいことずくめ、天才だね!と考えてました。いつも人の家にお世話になる私たちでしたがご時世的にちょっとアレかなと思い、プロのインターネッター上田氏に安宿を確保してもらいました。

大雨のニュースが気がかりな中、21時頃に世田谷代田で合流し出発。夜走りだから渋滞とかはそんなにないとは思っていたものの、呆気にとられるくらいスムーズに移動出来てうっかり日付変わる前に到着。時間調整で手前のPAに少し待機したりして、雨の影響もゼロ、HPをひとつも削られずに不思議な気持ちでホテルにつきました。

名前は出しませんが浜松のここのホテル、エントランスの民宿館、パーキングが飛び地になってる感じ、そもそも他より圧倒的に安い値段、などなどきな臭い感じがありましたが3人で取った部屋が7畳くらいにセミダブルベッドとシングルベッドが強引に置いてあって、クローゼットとか皆無。あと結局換気扇が微弱に動いてるのを最終的に気付けましたがあわやバスルームがno fan at allかと思わせる感じで、2つ星ホテル!ってグーグルに書いてありましたがこれで星2ケなら1つ星ってどんな感じなんだろうか…。清潔だったので寝ちゃえばOKという感じでした。

サクッと着きすぎて疲れてなかったものの翌日はチェックアウト早めにする必要があったためひととおりホテルにツッコミを入れながら優等生なタイミングで就寝。上田氏はエアマットを敷いて床に寝る運びとなりました。


8/13 浜松→大阪→浜松

全員疲れもなく、当然優等生なタイミングで起床。13:45からサウンドチェック、ということで雨の事とか未だ読めない渋滞とか見越して9時には出ようね、と前夜言ってたのですが8:30とかには身支度が出来てしまったため出発して近くのコメダ珈琲店で優雅にモーニングを頂きました。そういえば5年前くらいにも浜松のコメダに行ったねえ、という話が後の伏線になるとは思いもしませんでした。朝コーヒーをゆっくり飲めるのは本当に幸せ。

新名神が四日市の辺りから伸びたために鈴鹿亀山あたりでの渋滞あるあるがだいぶ緩和された話を聞いてましたが、雨も問題なし、渋滞もなし、と全てが味方して13時頃優等生的に扇町に到着。このあたりから雨が激しくなってきましたが、軽自動車だったこともありアンプ持ち込みもなく、また扇町はスーパーロングアーケード商店街があるためこういうときに助かります。ANYOのメンバーと再会を喜びつつ、近くのつくもうどんでランチ。自分たちの体調と完璧に調和するうどんを頂き、ここまでずっと2択に正解し続けてる感じになっていました。

私がワクチン副反応がかなり激しかったこともあり、さらに高熱や関節痛、筋肉痛などを何故か実験的に薬に頼らず乗り切ろうとしたため1週間くらい潰してしまい野口氏サポート版の貴重な最後のリハを飛ばしてしまったので、普段サウンドチェックは基本PAの人のためにやってるのですがこの日は全力で練習。病み上がり感とかいちばんダサいし見てる人が不安になるのはダサいを通り越してNGなので、精度含めてしっかり確認出来てよかったです。

リハ後開演まで2時間ほどあったため、主催の鉄兵氏誕生日ということもあり街ブラ+ケーキを買いに行くことに。雨が結構酷くなっていたのと楽器屋に寄って楽器買ってリハと違う楽器で演奏したいね!クレジットカードの限度額上がりましたってメール今来たし!というけしからん話になり梅田まで車で移動しました。楽器屋に関しては三木楽器は確か良かった、というフワッとした記憶だけで行ったのですが三木楽器っていっぱいあるんですね。私たちが行ったところは小さくて目ぼしいものはなかったです。残念。

近くにあるeイヤホンで高級イヤホンに耳鼓を打ちつつ、なんとなく見つけたティーンにバカ受けの気配のフルーツメインのスイーツ屋さんでホールのタルトを買って(パイナップル8個と迷いましたが…)、スタッフの方に失笑されながらバースデーメッセージも代筆してもらい、雨雨雨の中を会場に戻るとちょうどいい時間。お客さんもしっかり入っていて、改めて冒頭の葛藤逡巡を経て来て良かったと思いました。

トッパーはふつうのしあわせ。ベース安齋氏は京都GROWLYの長なので普段は雇用/被雇用のような関係性ですがこの日は出演者として同じ目線になるのもいいですね。改めてめちゃくちゃ変なバンド。2組めのJACKSTRAWは初共演でしたがドラムの方の魂のフルショット感が最高でした。終わった後楽屋にフルマラソン走った後のようなぼろぼろの感じで戻ってきたのを見て、勿論そういうアプローチが唯一の正解ってわけではないにせよ、今日これくらい疲れよう出し切ろうとスイッチが入りました。

1.鋏のあと
2.睡蓮
3.演じるサイン
4.DOPPELGÄNGER
5.Great Journey
6.バグとデバッグ

とりあえず悔いのない演奏は出来ました、疲れ果てたし終演後物販もたくさん手にとってもらえたので演奏の精度とかはアレかもしれませんでしたがグルーヴと熱量としては良かったと思います。

トリはこの日の主役鉄兵氏のバンドANYO。たくさんANYOのステージは見てきましたがpara-diceで見るとアットホーム感が強くて良いですね。大きなステージでのよそゆきの感じも捨てがたいですがメンバーの人柄を知ってるとこちらの方が自然に感じられます。内輪になりすぎない程よいホーム感。

久々に会う顔や爆音が嬉しくて、割とサクッとケーキを渡して離脱する予定だったのですが2〜3時間くらい談笑。ふつうのしあわせザッキー氏や、ANYO玉田氏(ルロウズは彼のtwitterにクソリプを送るのをライフワークにしています)が迸っているのを見て、理屈抜きでこれだよなあ、と思う時間を過ごせました。ケーキもケーキカッターがなく死ぬほど食べづらかったけど好評で幸せ。

HP0の私、サポートバンドで緊張感を強いられてHP3くらいの野口氏を含む一行はヘロヘロな感じで浜松へ。食事を摂るタイミングも逃してしまい、久々のツアーで体力配分とかもガバガバになってたのかもしれませんが雨雨雨雨の中、割と満身創痍な感じで27時前くらいに浜松のもうすぐゲームオーバー状態のテトリス宿に戻り、泥のように就寝。


8/14 浜松→静岡→東京

泥のように起床。寝てる時は雨音が気になりましたが朝の時点ではポツポツくらいの状態。ただ天気予報などをチェックすると予断は許さない感じでした。

静岡までは1時間くらい、12時会場INだったので朝食をのんびり食べよう、という話に。コメダ2連投はなんとなく発想が貧困だと思ったものの気の利いたモーニングを食べられる場所が探せず、苦肉の策で近くにあったイオンモールへ。気分がアメリカだったためいちばんアメリカぽかったバーガーキングでバーガーとポテトをコークで流し込んでやりましたよ。私は普段炭酸飲料を飲まないのでコーク2口めでコーヒーにすれば良かったと思ってましたが、まあ気分がアメリカだったから仕方がない。

雨にもそこまで影響されずに会場のFREAKYSHOWへIN。はじめて行った場所だったのですが広いFORESTLIMITって感じで個人的に最高でした。ざっくばらんな作りをしていて、バーもかっこいい。閉店してしまった騒弦からも100mくらいという事で、うっすらこの辺を散歩した記憶も蘇りました。

この日仕切りの仮説の2人との出会いは本当に偶然かつ直近の話で、浜松キルヒヘア閉店イベントで共演→妙に共鳴しコンピにオファー→レコ発も兼ねて2マン、とここまで5ヶ月くらいで全部巻き起こりました。夜のイベントが入っていたため昼開催だったのですが、ふたをあけてみたら夜のイベントが中止になってしまい、昼イベントながら何時までやってもいいですよと鬼なことを言われました。サウンドチェックを簡単に済ませ、割とすぐに開演。

先攻の仮説はシュールなミュータントパンク。編成的にも左右を意識してると玉木氏が言ってましたが、仮説の音はもっとミニマルで絵画的な質感があります。そして1曲ごとでなくセットリスト全体で流れというかカタルシスを作る抑制の利き方が素敵。聞いてなかったけどキャリアどれくらいなんだろう…。何も起こらない音空間を途中で怖がらずに作れるのはベテランの技ですよね。

1.鋏のあと
2.睡蓮
3.演じるサイン
4.DOPPELGÄNGER
5.あとで
6.Great Journey
7.バグとデバッグ

この日は昨日よりも精度が上がり、流れも作れました。レベル上がってくこの感じ、前日のフィードバックをすぐに試せるのがツアーの醍醐味。物販もたくさん手にとって頂きありがとうございました。

終演後は会場でだらだらと談笑。バースタッフがたぶん5年前くらいにキルヒヘアで共演した後に意気投合して朝まで遊んだラブラブフォーエバーのアンナ氏で、そういえば一緒にゾンビみたいな状態で浜松のコメダ珈琲に行ったなあと強烈に思い出しました。トロイモアのライブがずっとBGMで鳴ってたのですが、Skypeの呼び出し音みたいなのが一緒にずっと鳴ってて、そっちが変なタイム感でループしてるのが気になりすぎてイヤーワームになりました。

帰りになりいよいよ雨本領発揮。足柄あたりでは滝みたいな雨であっこれは危ないやつだ、となりつつも中井PAで捨て値になっていた野菜を買いまくり厚木で上田氏を降ろして以降は割と平和。なんとなく気分で下道で都内に戻りました。

改めて困難な状況下で足を運んでくれたお客さん、粘り強く開催に漕ぎ着けてくれた主催陣、そしてpara-diceとFREAKYSHOW!そしてまだ5回のリハと1回のライブしかしてなかったのに覚えゲーのルロウズ曲を叩きこなし、プラス運転も結局フルでしてくれた野口氏本当にありがとうございました。残る私たち3人の仕事はこの日起因の体調崩しをしないってことですが現状全員元気!ここをご覧の皆さんもまた健康で会いましょう。

20210806

701(MITOHOS II インタビュー①堀嵜菜那)

年末からコツコツ仕込んできたので足掛け8ヶ月!V.A.『MITOHOS II』は既にチェックして頂けましたでしょうか。感慨深すぎて客観視が出来ませんが、波紋のように広く遠くまで届いてくれれば、新しい素敵なご縁がここから生まれればと願ってやみません。

さて、前回もいくつか参加アーティストにインタビューをとっていたのですが今回もやります。第一回は今回の濃い口のコンピの中でも一際異彩を放つ楽曲で参加してくれました名古屋の巨大な才能、堀嵜菜那(@haraheri_i)です。


  *


__Gentleman Surferのジャパンツアーで金山のブラジルコーヒーで初共演した際からそのサウンドの不思議な質感に一瞬で夢中になりましたが、ネット上に転がってる情報も少なく、私にとって堀嵜さんは謎だらけの新しい友だち、非常に魅力的な存在です。ルロウズの界隈の人たちにとってもあるいは馴染みがないかもしれません。2015年からソロを始めたとありますが、自己紹介を含め現在のスタイルになった経緯などを伺えませんか。



堀嵜菜那:ありがとうございます。

元々はバンドをやっていて、大学の軽音サークルで楽器と作曲を始めました。入学当初はテレビやラジオから流れてくる音楽くらいしか聴いておらず、能動的に音楽を聴き始めたのもこの頃です。全バンドがコピーではなくオリジナル曲で活動するサークルだったので、音楽をほとんど知らない状態でギターと作曲をほぼ同時に始めた感じです。

先輩たちにCDを貸してもらったり、ライブハウスに連れていってもらったりしている内に、今まで自分が聴いていたものは音楽のごくごく一部の形なんだ、と気づき衝撃を受けました。バンドといったらチャットモンチーくらいしか聴いたことなかったのに、いきなり人間椅子とかGentle Giantとか聴かされて、私の知ってる音楽と違うぞ!と固定観念が一気に壊されていく体験をよきタイミングで出来たのかなと思います。すぐにアウトプットして発表できる機会もありましたし(内容は稚拙でほんとに酷かった....)。

サークルの先輩たちがみな野心的で、スラッシュメタルとかギターロック、ファストコア、歌謡ポップなどバンドのジャンルもばらばらなんですが、みんなに紹介したいくらい今聴いても刺激的な音楽をやっている人ばかりで、周りから「オリジナルとは」を見せつけられてたのが、自分の核に大きく影響を与えました。



__サークル在籍中に急な過入力をした、みたいなスタートだったんですね。



堀嵜:バンドはサークル引退と共に解散。大学卒業から2年後に、2人のひとにほとんど同時にソロに誘われて始めました。エレキギターを使用してるのは家にそれしかなかったからで意図はないのですが、私は作曲の際、頭ではなくほとんど身体でギターパートを作ってるので、もしアコースティックギターを使っていたらきっと今のようにはなっていないだろうなと思います。

いざ弾き語りの曲を作ろうとした時、自分の思うオーソドックスな弾き語りスタイルでフォークっぽい曲を少し作ってみたのですが、受け入れがたい違和感がありやめました。弾き語りに持っている固定観念を捨てて、ただ一人で曲を作るという認識に変えて、一人くらいこういうちゃんとしてない曲を作る人がいてもいいよね、と思いながらやってみたら曲を聴いた同じサークル出身の先輩たちがすごく褒めてくれて、曲を褒めてもらえたのがその時人生で2回目だったのですが、それがうれしくて調子にのって今でも続けています。



__参加曲「崩落(Perfect Communication)」は不協和音やリズムチェンジの使用が印象的で、アヴァンギャルドさとキャッチーさがあるパラレルワールドのような音世界が圧巻です。言い方が難しいですがフリーすぎない、トータルでポップスに聴こえるバランス感覚/センスが特に私は好きでした。サウンドにおけるインスピレーション、また楽曲内で大事にしていることはなんですか。


堀嵜:ありがとうございます。

曲を作るときのインスピレーションというかモチベーションは、ミーハーなので「他者への強烈な憧れ」であることが多く、格好いい音楽を聴くとすぐ「私もこれやりたい!」と思ってしまいます。ただ作る時に具体的なイメージはなくて、「アルペジオのコード感ある曲」とか「単音のリフ感強い曲」とかぼんやりしてることの方が多いです。とりあえず手を動かして出てきたものに歌をのせてまた手を動かしての繰り返しで、完成してやっと全体像が見える。いつも行き当たりばったりでやっています。

一般的には作曲においてイメージ=事前に考えたことの具現化を目指す方が多いのだと思いますが、私の場合は作曲、とくに作詞と考えるということがイコールなんだと思います。なので曲が進むにつれ考えも進み深まっていったりこんがらがったりしていく。(保坂和志さんが『小説の自由』の中で文章について同じようなことを書いていたと思うんですが、、それを見て安心した記憶があります。) 

楽曲内で大事にしてることは「開けている」ということでしょうか。感覚的なものなのですが、ポップさもその一つの形と言えます。偏りすぎずギリギリでバランスを取れたらなと思っています。なので「トータルでポップスに聴こえる」というのは目指しているところでもあり、とても嬉しいです。大事にしていてもコントロールがなかなかできないのですが、この曲は展開やギターではなく歌の強度にフォーカスしたためか、良いバランスになったと自分でも思っています。



__今回含めて堀嵜さんの諸作にはDOIMOI杉山さんやトゥラリカ/THE ACT WE ACT横山さん、またbushbashやtissueboxなど、どちらかというと硬派な音の界隈との親交が深いように思います。そういったパイセンたちからの影響、また「名古屋は東京と大阪の中間地点にあるからその摩擦から折衷的な新しい音が生まれやすい」とクリシェのように言われますが、いまの名古屋のシーンやそこから自身へのフィードバックについてどう考えてらっしゃいますか。



堀嵜:ずっと名古屋のシーンというものに自分は入れていないと思っていたのですが、杉山さんや横山さんなどの信頼する音楽家の見守りやアドバイスをもらえる環境があって今も音楽を続けていられることを思うと、ある種私もその一部なんだろうと最近思うようになってきました。

周りの音楽家の方々にはもちろん影響を受けまくってます。大学生の頃から今日まで抱き続けている、隙間のある音楽がもつ余白の美しさと自由さへの憧れはトゥラリカ(vo,gtの横山さんとdr泉さんは同じサークル出身)やシラオカなどの影響によるものです。



__隙間、余白、自由さ。どれも堀嵜さんの音に見事に結実していますよね。バンドよりソロの方が有利に感じられるような
分野ですが、確かにトゥラリカはそこをうまく超越している印象があります。



堀嵜:名古屋を中心に活動する音楽家の方々はただ各々の音楽を追求することに熱を注ぎ、名を馳せることにはあまり興味がないという印象があります。独自の音楽が生み出されるのもその姿勢の元では自然なことのように感じます。

ソロを始める前はKDハポンやブラジルコーヒーやHUCK FINNなど色んなライブハウスの予定をチェックして、毎週のようにライブを観に行っていました。私はとにかく自分にあまいのでこの時に育まれたライブハウスやそこに出演する人たち、そしてサークルの先輩たちへの畏怖にも近い尊敬の念がなければ今回のコンピに参加できるような活動はしてこれなかったし、私を律する眼として今も機能しています。



__1stアルバム『壺』から2年が経ちました。当時と比べてパンデミックがあり世界はすっかり変わってしまいましたが、タフな現在の状況でのご自身の在り方、そして今後出したい音のイメージや活動のビジョンなど伺えませんか。



堀嵜:今後出したい音のイメージは正直全然ありません。全然ないとすごく不安になるのですが、そもそも今まであったことがないので.....。まぁなんとかなるだろうと思ってます。

音のイメージはないですが、録音やミックス、打ち込みが簡易的にでもできるようになれたらいいなと思っています。今は次のアルバムの構想を練っていて、前作では弾き語りからはみ出さないようはっきり線引きしていたのですが、次のアルバムでは少ない音にエフェクトをかけたり音を動かしたりしてねじれを起こさせられたらいいなと思っていて(今回の崩落でも少し試しました)、その試行錯誤を自分でもできたらと思います。

あとは移動好きなので移動したいです!気兼ねなく移動できるようになったら九州とか北海道とか、いつか国外にも行ったことのない街に演奏しに行けたらいいなと夢見ています。



__自身にとってのオールタイムベスト5枚を教えてください。



堀嵜:ベストを選べるほど音楽を聴いてきてないので、今回の収録曲を作るきっかけになった大好きなアルバムを1枚紹介します。


Bela Fleck「THROW DOWN YOUR HEART」


崩落はこのアルバムへの憧れで作りました。内容は全然違います。他人の肉体から出る知らないリズムへの憧れ。



__クレジットにあったsoilって土の音を録ったってことなんでしょうか?



堀嵜:はい。土にマイクを埋めて引っこ抜いてます。

パーカッションについて何かが足りないね、
と話していたら、亀山さん(亀山佳津雄)が「粉砕工場の音とか、火山行ってマグマの音録るとか、土にマイク埋めるとか」と多分半分は冗談で言ってて、そしたらだんだん土にマイク埋めるの合いそう!と思えてきて、やってみていいですか?とお願いしました。その翌日亀山さんと公園に集まって穴を掘りました。自分からは出ないアイデアです。

亀山さんの言ってることはぜんぶ冗談だけど、ぜんぶ本気でもあると思っているので安心して乗っかれました。これはなかなか面白かったのでまたやりたいと思います。

次のアルバムも亀山さんとなにか企む予定です。

700

 


V.A.『MITOHOS II : A GUIDE TO JAPANESE GALAPAGOSIZED MUSIC』
DEAF TOUCH (DT-004)
2021.8.6 ON SALE
FREE DOWNLOAD (TIPS ARE WELCOME!)

1. chikyunokiki / Shinkyo (札幌)
2. ユウレカ / AntiBody (徳島)
3. z/nz / DAYS (福岡)
4. EXTRUDERS / kaori (横浜)
5. ノイエサンスーシ / Alesis (長崎)
6. GROUNDCOVER. / io (Retake) (東京)
7. THE RATEL / 十字路 (東京)
8. MUSQIS / The Phantom Of Liberty (東京)
9. YOLZ IN THE SKY / Ooh (大阪)
10. 堀嵜菜那 / 崩落 (名古屋)
11. 仮説 / 三月の蛙 (静岡)
12. Furate / Never Let It Go (山口)
13. olololop / a five (札幌)
14. Waikiki Champions feat. misz / 魅せられて (仙台)
15. 倉地久美夫 / 水道のメーターを量り売りに来た (福岡)
16. LOOLOWNINGEN&THE FAR EAST IDIOTS / ねむり/めざめ (東京)
17. moools / 古い歩道橋 (東京)
18. AYNIW TEPO / Tori (奈良)

Mastered By Kentaro Nagata (elect-low, Team Frasco)

昨年末にリリースし大好評だった日本の素晴らしいオルタナティブたちを世界に発信するプロジェクト『MITOHOS』第二弾、ロサンゼルスの新進気鋭レーベルDEAF TOUCHから堂々リリースです。全曲新録、全国から18の最新を凝縮してお届けいたします。奇しくも本日8/6はBandcamp Friday、チップで頂いたお金は100%アーティストに還元されます。フリーダウンロードも可ですのでとにかくまずは一度リンクにアクセスしてみてください。

本作収録のルロウズ「ねむり/めざめ(Asleep/Awake)」は完全新録、かつ音源だからこそ挑戦出来たベースレスの楽曲。ニーナシモンの「Ain't Got No / I Got Life」のように言葉を淡々と積み上げていってナチュラルなカタルシスを得る、ビョークの「Hyperballad」のライブ版のようにトラックに抑揚をつけすぎないっていうのを意識したのですがうまくいってますでしょうか。歌詞はここ2年で感じていることを煮詰めて、干して、煎じて、お湯で戻しました。

海を超えてたくさんの方々に届きますように、そして新しく愉快で素敵な繋がりが次々と生まれますように…!併せて、このタイミングで『MITOHOS』第一作も是非再びチェックお願いいたします。

20210724

699

 

ルロウズ新譜ミックス④

この日は山本氏抜き。ルロウズは基本全員フルタイム立ち会いでミックスを進めるのですが、やはり自分の演奏したところのOK/NGラインって他の人が聞くのとは別のポイントでありますよね。またルロウズは録音物をライブと分けて考えてるので、思いつきでの原音鬼加工も辞さず、ということもあり折角の生音を地獄音に変えることもしばしば。立ち会ってないとそこに至るまでのストーリーがわからなかったりするので、やはりリアルタイムで共有はしておきたいところです。

さてこの日はまず前回のドッペルゲンガーのミックスパート2。トリオのみのサウンドなら触る場所少ないと思いきや修正したいとこや仕掛けを作りたいとこなどワサワサ出てきて、ひととおり形になるまで案外すごく時間がかかってしまいました。

そして最後に手がけたのは「コンコルド(Concorde)」。ライブでもおなじみの曲なのですが、これはアレンジで既に仕掛けまくりにしているので、基本的には奇を衒わずマキシマム音質にすることを意識しました。テレキャスターで録ったギターの音をレスポールのクリーントーンみたいにしてくれという無茶苦茶なオーダーをしつつ、オーバーダブほぼしてないのに分厚い音にしてくれという不条理なオーダーをしつつ、スピード感がありつつもワインでいうボディの要素がしっかりとある音になったような。

本日はここまで。ここからフィードバックを経て最終ミックスへと向かいます。今作はアメリカでリリースする際にアナログ化を目論んでるのですが、ミックスしたところ7曲でなんと奇跡の39分(レコーディング時あまり時間を気にしてなかった)。カウント切ったり一部マスタリング時にフェードアウトする予定なので理屈上はアナログへの道のりに一歩近づけました。前作はSXSWの時期とモロ被りで納期が鬼すぎるため諦めたアナログリリースですが、今作は今のところ自信作だしキャッチーだし(当社比過去最高)、うまくいくといいなあと思っております。アルバムのタイトルも決めたし、進んでる実感があると楽しいですね。そしてマスタリングエンジニアを探す旅も始めなければ…。